207GTが高速ツアラーなら、207GTiはまさにホットハッチ
プジョー207シリーズの最強モデルとされる207GTiだが、正直に言うと、このクルマの狙いが今ひとつ理解できていなかった。207シリーズのスポーツモデルとしてはすでに207GTがある。しかも、207GTiと207GTはともに、3ドア+5速MT+1.6L直噴ターボ。175psと150ps、そのパワー差25ps。320万円と264万円、その価格差56万円をどう理解すればいいのだろうか。
もう少し詳しく207GTiと207GTの違いを見ておこう。
●エンジン。ともにBMWとの共同開発の下に誕生した1.6L直噴ターボをプジョーがチューンしたものだが、207GTi用のものは過給を上げて175psまでパワーアップされている。なお、水温が90度以上、エンジン回転が1600rpmから4500rpm、ギアが3速から5速、フルスロットルという条件を満たしたとき、過給圧が2.0バールまで(通常は最大1.8バール)上がり、260Nmの最大トルクを発揮するオーバーブースト機能もついている。
●ギア比。同じ5速MTながら、207GTiは1速をハイギアードとする一方、2速以上をローギアードとすることで加速性能を上げている。
●タイヤ。205/45R17とサイズは同じながら、207GTiはBSポテンザRE050Aを標準装着。207GTはピレリPゼロネロ。
●サスペンション。207GTiは専用のスプリング、ショックアブソーバーを装着。207GTiはフントアンチロールバー、リアトーションバーも強化されている。
●ブレーキ。207GTiに専用のフロントブレーキシステムを採用。ディスク径302mm、キャリパーのピストンは径57mm。
●207GTiにステアリングスタビリティプログラムを採用。これはESPと電動パワステの制御系を組み合わせたシステムで、左右車輪でミューが異なる路面でブレーキをかけたときなど、ステアリングに直進方向に戻す反力を与えて車両の動きを安定させるもの。
●エクステリア。特徴的なヘッドライトは207GTiではダーククローム加工のさらに精悍なものになり、ドアミラーにはサテンシルバー塗装が施されている。またエキゾーストパイプは207GTiではセンター2本出しとなり、リアバンパーも207GTi専用のものに変わる。また207GTiではルーフに大型リアスポイラーも装備される。
●インテリア。207GTiはサイドに本革、座面にアルカンタラを使用したフルバケットシートを採用、リアは2人掛けのフル4シーターとなる。メーターはクローム仕上げのブラックメーター、ステアリングはメタリック調リング付きの専用デザイン。
こういった違いを確認し、「プジョーのモータースポーツのエッセンスをすべて注ぎ込んだ」という謳い文句を聞けば、多くの人が過激で戦闘的なモデルと想像することだろう。
ところが、乗ってビックリ、ガチガチに固められた野蛮なクルマではなく、プジョーらしい気持ちのいいものだったのだ。パワーアップされたことによる気むずかしさはまったくなく、軽快そのもの。オーバーブースト機能を試すことはできなかったが、それでもこのパワー感は1260kgという車重には刺激的ですらある。
その走りは豪快というより痛快といったもので、クロス化されたギア比もあって気持ちのいい加速を見せる。タイトコーナーでは1速さえも使える愉しさで、2速以上も巧みにギアリングされていて、シフトすることが歓びになってくる。足まわりは基本的に硬めだが、しっとりとノーズが入る感じで、キュンキュンと曲がっていくのだ。
プジョーは細いタイヤを履いたベースグレードこそ面白いと思うが、これはこれでアリかもしれない。207GTが高速ツアラーなら、207GTiはまさにホットハッチ。207GTiのピリッとした味は、ゴルフGTIにも劣らぬものだと思う。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年9月号より)
プジョー 207GTi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4030×1750×1470mm
●ホイールベース:2540mm
●車両重量:1260kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/6000rpm
●最大トルク:240Nm/1600-4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:320万円(2007年)