180SXはターボエンジンのみの設定
相変わらず人気の衰えないシルビアと、もともとはシルビアの対米輸出用モデル(240SX)として生まれた180SX。
日本ではシルビアのほうが圧倒的に販売台数が多いが、これは日産が国内専用にデザインしたノーズを採用した作戦勝ちともいうべきもの。
日本人好みの端正かつ美的バランスを保つフォルムは絶大な人気を博した最大の要因であろう。それに加え、手の届きやすい価格で十分以上の性能と装備を持つQ'sグレードの存在は大きい。
180SXは車種設定がターボエンジン搭載車に限られることから、価格に関してはシルビアほど取っつきやすくない。
これは、この2車で選ぶと仮定すれば、予算によっては自動的にシルビアに決定してしまうことになる。
だから、ここではシルビアはK'sを選択することを前提として、シルビアがいいか、180SXがいいかを考えてみることにしよう。
スタイリングで好みが分かれる2台
この2台、とにかくスタイリングの好みが大きく左右するのはいうまでもないだろう。シルビアの女性、男性にかかわらずに好まれそうなスタイリングに対して、180SXは好き嫌いがはっきりと別れそうなクセがあるスタイリングだ。
フォード・プローブや三菱エクリプスなどのアメリカンクーペに共通しているものだが、日本人の目から見ると全体のデザインバランスが少し崩れているように見えるし、美しさよりはダイナミックであることを求めているように思える。
個人的にも、やはりシルビアのデザインはバランスがとれており、しかもディテールまでまとまっているが、180SXは残念ながらアンバランスな印象は否めない。
もうひとつは使い勝手の差だが、後席は2車ともエマージェンシー用ながらヘッドクリアランスではシルビアに分がある。
その一方、180SXはリアシートバックを倒すことで広い荷物スペースを得ることができる。シルビアのトランクは容量的にミニマムなので、ここに不便を感じるなら180SXとなる。
次に走りの違いだ。この2車はマイチェン前は、バネレート及びダンパー減衰力が大きく異なり、操縦性に大きな差をもたらしていた。
シルビアのキビキビした動きに対して、180SXはそのスポーツイメージとは裏腹に、シルビアよりソフトに振られたサスペンションとリア側マスの大きさにより、グラッとロールすることや限界でのリアの振り出しと収束がスムーズさに欠ける嫌いがあった。しかもHICAS-II仕様では、アンダーステア傾向が助長される結果となっていた。
マイチェン後は、この2車はまったく同じセッティングとなり、方向性としてはシルビアもマイチェン前の180SXに近づいた。これは全体にソフト化されたサスペンションによるもので、結果的に安定方向に振られた操縦性となった。
やはりこの結果、とくにスーパーHICAS付では、意図してリアを振り出すようなドライビングをしない限りは徹底してアンダーステアを保つものとなっている。
限界時のリアの動きが大きい180SX
だが、ここでもシビアに見れば2車に違いが見られる。それは180SXのリアのマスの大きさに起因する。
これは日産の開発ドライバーも認めているが、限界でのテールの動きは当然ながらシルビアよりも180SXのほうが大きくなっている。
もっとも、ここまでの挙動の違いを見分けられるのは相当ドライビングレベルの高いドライバーに限られる。
しかし、スタイリングとこの操縦性の差、さらにはシルビアのほうが価格が僅かに安い(ただしシルビアK'sはアルミホイールがオプション、180SXタイプⅡは標準装備)ことなどを考慮すると、やはりオススメはシルビアということになる。(新刊 Motor Magazine Mook GTメモリーズ① 「S13シルビア」より)