年間7戦で争われる国内トップフォーミュラカテゴリー「全日本スーパーフォーミュラ選手権」はシリーズ前半の3戦目までが終了した。この時点で平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)とニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)が共に1勝ずつでランキング1-2位となっている。

開幕戦をポール・トゥ・ウィンで制した平川亮

2020年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は8月30日にツインリンクもてぎで開幕を迎えた。予選、決勝をワンデイで行うこのラウンドでポールポジションを獲得した平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)が、午後に行われた35周の決勝レースでもスタートからそのポジションを明け渡すことなく勝利。開幕戦をポール・トゥ・ウィンで飾った。2位、3位には山下健太、サッシャ・フェネストラズのKONDO RACING勢が予選とは順位を入れ替えながら表彰台に上った。ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)は粘りの走りで6位入賞。

1位 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
2位 山下健太(KONDO RACING)
3位 サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)
4位 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)
5位 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION)
6位 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)

画像: 優勝の20ptに加えポールポジションの3pt、平川は合計23ptをこの開幕戦で荒稼ぎ。

優勝の20ptに加えポールポジションの3pt、平川は合計23ptをこの開幕戦で荒稼ぎ。

画像: 平川は開幕戦に続き第2戦もポール獲得など、昨年の初勝利を経て6シーズン目についに覚醒か。

平川は開幕戦に続き第2戦もポール獲得など、昨年の初勝利を経て6シーズン目についに覚醒か。

第2戦はチームセルモの1-2フィニッシュ

続く第2戦は9月27日、岡山国際サーキットでの開催。このラウンドより決勝レース中のタイヤ交換が義務付けられ戦略の幅が広がる。2戦連続でポールを獲得したのは平川だが、決勝レースではスタート直後の混乱で順位を上げた坪井翔、石浦宏明のチームセルモ勢が、ピット作業後に平川を逆転して前に出る。チームメイト同士のバトルを避け、タイヤ交換を遅らせたキャシディとのギャップをコントロールし坪井、石浦の順でフィニッシュ。坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)が2シーズン目で初勝利となった。キャシディは最終的に平川の前に出ることに成功し予選10番手から3位入賞を果たした。

1位 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
2位 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)
3位 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)
4位 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
5位 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
6位 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION)

画像: 予選8位からスタートした坪井がスタート直後の混乱に巻き込まれる事なくポジションを上げ勝利

予選8位からスタートした坪井がスタート直後の混乱に巻き込まれる事なくポジションを上げ勝利

画像: 石浦は坪井を抜くよりもキャシディを警戒しての結果2位、選手権にどう影響するか。

石浦は坪井を抜くよりもキャシディを警戒しての結果2位、選手権にどう影響するか。

反撃のキャシディが第3戦で逆転勝利

第3戦はスポーツランド菅生で10月18日に、珍しく夏を過ぎての開催となった。平川の3戦連続ポールかと思われた予選Q3の終了間際、トップタイムをマークしたのはセルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)、来日が延び今回がデビュー戦となるがポールポジションを獲得した。しかしカマラは決勝スタートで平川に先を越され徐々にポジションダウン、さらにタイヤ交換直後にコースアウトしレースを終えた。これにより導入されたSCでの隊列は平川、山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION)、キャシディの順。その後リスタート直後の冷えたタイヤをうまくコントロールしたキャシディが次々に2台を交わしトップチェッカー。これで首位の平川に15pt差のランキング2位に浮上した。

1位 ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)
2位 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
3位 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION)
4位 野尻智紀(TEAM MUGEN)
5位 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)
6位 山下健太(KONDO RACING)

画像: タイヤのウォームアップが得意のキャシディ、十分警戒していた平川もなす術なく抜かれてしまう。

タイヤのウォームアップが得意のキャシディ、十分警戒していた平川もなす術なく抜かれてしまう。

画像: 今年を最後に日本を離れるというキャシディ、セッション以外で我々に見せる表情も穏やかに感じる。

今年を最後に日本を離れるというキャシディ、セッション以外で我々に見せる表情も穏やかに感じる。

山本尚貴が復活の狼煙を上げるか

悪夢のような開幕戦のアクシデント、ノーポイントから第2戦で6位、第3戦は3位と上り調子にある山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION)はポイントでは平川に35pt差を付けられている。例年ならば逆転は不可能とも思えるその差だが、今年は1位20pt、10位までポイントが与えられるシステムゆえその差は思ったより少ない。しかも今年は特例の有効ポイント制で上位5戦分のみカウントされる。つまり、ノーポイントの開幕戦を「なかった事」にできるのだ。もちろんこれは他のドライバーにも言えることで理論上は全員に王座のチャンスがある。平川、キャシディはすでに大量得点を獲得しているラウンドが複数あるため、精神的に有利なのは間違いないが、実は第5戦、6戦は山本が得意としている鈴鹿でのダブルヘッダー。大いに逆転のチャンスはあると言っていい。

画像: 徐々に調子を取り戻してきた山本、現在ホンダエンジン勢のトップランカー。

徐々に調子を取り戻してきた山本、現在ホンダエンジン勢のトップランカー。

画像: 一昨年、昨年と最終戦までもつれた山本vsキャシディの対決は1勝1敗、それも今年で見納めとなる。

一昨年、昨年と最終戦までもつれた山本vsキャシディの対決は1勝1敗、それも今年で見納めとなる。

有効ポイント制で海外遠征組、外人ドライバーは?

新型コロナウィルスの影響で世界的に変則スケジュールとなった2020年のモータースポーツ。国内と海外をかけ持つドライバーにとって悩ましいシーズンとなっている。開幕前のテストで速さをみせたユーリ・ヴィップス(TEAM MUGEN)はその後の再来日がかなわずチームはこれまで笹原右京を代役に立てている。開幕戦に参戦したタチアナ・カルデロン(ThreeBond Drago CORSE)はその後欧州の耐久レースに参戦するなどしておりSF参加の再入国がタイミング的に微妙な状態。第2戦をWEC(ルマン24H)のため欠場した中嶋一貴、小林可夢偉は再びWECバーレーン戦との日程が重なるため第4戦オートポリスも欠場となる。同じくWEC参戦組の山下健太だが、チームがバーレーン戦にはエントリーしないため残りのSFは全戦出場できる見込みだ。現在ランキング3位の山下も有効ポイント制の恩恵を受け十分にチャンピオンを狙うことができる。

画像: 山下の事実上年内のWEC参戦は終了、スーパーフォーミュラに専念できる。

山下の事実上年内のWEC参戦は終了、スーパーフォーミュラに専念できる。

画像: いきなりの速さを見せたセッテ・カマラ、F1レッドブルのリザーブとどう折り合いをつけるのか。

いきなりの速さを見せたセッテ・カマラ、F1レッドブルのリザーブとどう折り合いをつけるのか。

スーパーフォーミュラは全戦で観客を入れての開催

有効ポイント制の採用で、第3戦が終了しても全員にチャンピオンの可能性があるという混沌としたシーズンは、見る者にとってもエキサイティングなのは間違いない。実はスーパーフオーミュラでは新型コロナ感染対策をした上で開幕戦より有観客での開催を実現している。ピットウォークやステージ等のイベントは行われないが、第4戦オートポリスではこれまでは入場できなかったピット周辺エリアについて「ピットビューイング」と称したイベントを企画しているとのこと。シリーズ天王山ともいえる第5、6戦鈴鹿でのダブルヘッダーはチャンピオン有資格者が決定する今シーズン一番の見どころ。そして最終戦の富士スピードウェイは異例とも言える12月下旬のチャンピオン決定戦。ぜひ現地で観戦してみてはいかがだろうが。

全日本スーパーフォーミュラ選手権 後期開催スケジュール
11/14-15 第4戦 オートポリス
12/5-6 第5戦、6戦 鈴鹿サーキット
12/19-20 第7戦 富士スピードウェイ

画像: 12月の鈴鹿ラウンドでは土日にかけて決勝スタートシーンが2回も見られる。

12月の鈴鹿ラウンドでは土日にかけて決勝スタートシーンが2回も見られる。

スーパーフォーミュラ ドライバーズランキング(第3戦終了時)

1st  平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)51pt
2nd ニック・キャシディ(VANTELIN TEAM TOM'S)36pt
3rd 山下健太(KONDO RACING)21pt
4th 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING)21pt
5th 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)20pt
6th 山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION)16pt
7th サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)15pt
8th 野尻智紀(TEAM MUGEN)13pt
9th 国本雄資(carrozzeria Team KCMG)10pt
10th 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION)10pt
11th 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S)8pt
12th 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)6pt
13th 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RCING)6pt
14th 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM'S)4pt
15th セルジオ・セッテ・カマラ(Buzz Racing with B-Max)3pt
16th 大嶋和也(ROOKIE Racing)3pt

優勝 20pt 2位 15pt 3位 11pt 4位 8pt 5位 6pt 6位 5pt 7位 4pt 8位 3pt 9位 2pt 10位 1pt
予選PP 3pt 2位 2pt 3位 1pt

画像: スーパーGTではチームメイトとなるこの2人、互いの手の内を熟知した上での勝負は大変興味深い。

スーパーGTではチームメイトとなるこの2人、互いの手の内を熟知した上での勝負は大変興味深い。

(PHOTO:井上雅行)

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