フェルスタッペン3位、ガスリーが5位入賞
日曜日の決勝、上空には雲が多く、気温は21度ながら路面温度が低く、新しい舗装は依然としてグリップレベルが低い状態だった。おまけに、風が強く、スタート直前には小雨もパラつき始める、非常に難しいコンディションとなった。
トップ10はメルセデスAMG勢とシャルル・ルクレール(フェラーリ)がミディアムタイヤ、それ以外はソフトタイヤでのスタート。タイヤが温まりにくく、グリップしない状況の中で、ミディアムタイヤのメルセデスAMG勢は慎重に走行、かわってソフトタイヤのマクラーレンの2台とキミ・ライコネン(アルファロメオ)が上位に進出する。ポールポジションのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は一時3番手まで後退した。
レッドブル・ホンダのフェルスタッペンも苦戦、ソフトタイヤで上位進出を狙っていたが、一時5番手まで順位を下げることになってしまった。それでもここで無理をしなかったことが功を奏し、タイヤが温まるとソフトタイヤのペースを活かして、序盤であっさりと3番手の座を取り戻した。この時すでにメルセデスAMGと差は大きく開いていたが。
フェルスタッペンは23周目に1回目のピットインを行い、ミディアムタイヤに交換。2ストップでメルセデスAMGに勝負を賭けることも視野に入れていたが、4番手のシャルル・ルクレール(フェラーリ)がミディアムからハードタイヤの1ストップ戦略に出たこと、セーフティカーの導入がなくタイヤ交換のチャンスに恵まれなかったことから、そのまま最後まで3位を守り3戦連続表彰台でフィニッシュした。
素晴らしい走りを見せたのが、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。スタート時にタイヤをしっかりとケアすると、タイヤが温まってからオーバーテイクを連発、5番手まで順位を上げて29周目にミディアムに交換すると、ここでもタイヤが温まるまで我慢して、終盤、猛烈なペースで追い上げて5位フィニッシュを果たした。
アレクサンダー・アルボン (レッドブル・ホンダ)はもったいないレースをした。予選6番手からスタートしたものの序盤の混乱でトップ10から脱落、集団の中に埋もれたため早めのピットインを敢行して19周目にミディアムタイヤに交換する2ストップ戦略をとったが、後方から抜け出せず12位に終わった。
ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)は予選13番手から得意の決勝で2ストップでポイント獲得を狙ったが、トラックリミット違反の5秒加算タイムペナルティもありリズムに乗れず19位にとどまった。
ホンダパワーユニットとしては明暗が分かれる形となったが、今季11度目、第2戦から11戦連続の表彰台獲得となり、今季5戦を残した段階で、昨年の表彰台獲得数に並んだことになる。メルセデスAMGの背中は見えているが、もうひとつ、速さが必要な状況だ。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、ポルトガルGPを終えて「レッドブルのフェルスタッペン選手が3戦連続となる3位表彰台を獲得し、ホンダにとっては11戦連続となる表彰台をもたらしてくれました。週末を通して速さを見せていたアルファタウリのガスリー選手は、レースでオーバーテイクをいくつも見せて5位入賞と素晴らしい走りを見せてくれました。今週末は予選に続いて、レースもタイヤマネージメントが大きなキーとなったと思います。フェルスタッペン選手、ガスリー選手は、レースペースをコントロールしながらうまくタイヤマネージメントしたことでよいレース結果を得たと思います。来週はイタリアのイモラサーキットで、土曜と日曜の2日間開催のフォーマットでレースが行われます。イモラサーキットは、アルファタウリのファクトリーから目と鼻の距離にあり、チームにとっては今季3度目のホームグランプリとなります。また、現行ハイブリッドレギュレーションでの初開催ともなりますので、十分に準備をして臨みたいと考えます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「全体的には3位という結果に満足していますし、予想通りの位置だと思います。序盤の小雨と低グリップはもちろん楽ではなかったのですが、できることはすべて試しました。最初の数周はタイヤ温度がかなり低くなっていました。なぜマクラーレンの2台がオープニングラップであんなにグリップがあったのかは分かりませんが、雨が止んでからは彼らをパスして3番手までポジションを戻せたので、そこからは自分のレースに集中しました。今日は、いくつかの理由からソフトタイヤがうまく機能しなかったのですが、ミディアムに交換してからはいいペースで満足いく走りができました。そのときにはメルセデスと大きなギャップができていたので、できることはあまりありませんでしたが、また表彰台に立ててうれしく思っています。ピット作業に何秒かかったのかは把握していませんが、とても速く感じました。メカニックたちには、最速ピットストップのお祝いを楽しんでほしいと思います」
アレクサンダー・アルボン
「タフなレースで、序盤からグリップに苦しみました。マシンは速かったのですが、トラフィックの中で本来のペースを発揮できませんでした。走行ラインにうまく乗れず、最初の3ラップはタイヤ温度にも苦しみ、フロントをロックアップさせてしまいました。タイヤが温まってからのマシンはよかったのですが、ここのところタイヤを適正な温度レンジに入れるのに苦しんでいたので、温まる前に後方のトラフィックに入ってしまいました。一度DRSトレインの中に入ると、オーバーテイクは難しくなってしまいます。ライバルとは違うことを試そうと2ストップ戦略を採りましたが、振り返ってみればベストな作戦ではなかったかもしれません。今日のレースやレースウイーク全体から、学ぶべきことを見直して、イモラではいいパフォーマンスが発揮できるようにしていきます」
ピエール・ガスリー
「ライバルといいバトルができ、本当に楽しかったです!ソフトタイヤの感触が非常によく、レースの序盤でうまくマネージできたので、ライバルたちがタイヤの劣化に苦しみ出したあたりで、ルノー、マクラーレン、レーシングポイントのマシンを抜いていくことができました。トップ3チームの後ろの5位というポジションでフィニッシュできたことは小さな勝利のようにも感じているので、この結果は本当にうれしく思っています。金曜の夜にはマシンをゼロから組み立てるためにチームのみんなが本当にがんばってくれたので、今日の5位という結果を彼らに贈ることができて本当によかったです」
ダニール・クビアト
「よくないレースでした。1周目でポジションを落としてしまい、そこからあまりできることはありませんでした。タイヤの感覚が悪く、熱が十分に入らない感じがして、序盤はグリップに苦しみました。風もあったので簡単な状況ではなかったですし、こういう中でのレースはいつも難しいものです。いいレースができるときもあれば、悪いときもあり、僕にとって今日は悪いレースになりました。今日の走りを分析し、序盤の数周でタイヤ温度も含めてなにがあったかを見直した上で、来週はより強くなって戻ってこなければなりません」
タイヤを供給するピレリは、ポルトガルGPについて「各チームにとって未知の部分が多いチャレンジングなサーキットで、また天候状態やトラックの路面など、タイヤにとって厳しいコンディションの下で、全3種類のコンパウンドが示した性能に満足しています。路面温度が低く、雨もパラついたトリッキーなコンディションでしたが、いくつか印象的なロングスティントが見られました。中でも、予選のポールタイム計測でも使用され、全ドライバーが使用したミディアムタイヤは際立っていました。優勝したハミルトン選手が採ったタイヤ戦略は我々が最速と予測していたものでした」と分析している。
次戦は連戦となるイモラサーキットでのエミリア・ロマーニャGP。ここでは試験的に2日間フォーマットが採用され、10月31日に90分間のフリー走行と予選、11月1日に決勝が行われる。
2020年F1第12戦ポルトガルGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 66周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG))+25.592s
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+34.508s
4位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +65.312s
5位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+1周
6位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+1周
7位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+1周
8位 31 E. オコン(ルノー) +1周
9位 3 D.リカルド(ルノー)+1周
10位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ) +1周
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +1周
19位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +2周
F1ドライバーズランキング(第12戦終了時)
1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)256
2位 V.ボッタス(メルセデスAMG)179
3位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)162
4位 D.リカルド(ルノー)80
5位 C.ルクレール(フェラーリ)75
6位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)74
7位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)65
8位 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)64
9位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)63
F1コンストラクターズランキング(第12戦終了時)
1位 メルセデスAMG 435
2位 レッドブル・ホンダ 226
3位 レーシングポイント・メルセデス126
4位 マクラーレン・ルノー 124
5位 ルノー 120
6位 フェラーリ 93
7位 アルファタウリ・ホンダ 77