洗練された都会派か、使いこなせる実用派か
2020年8月に発売されたヤリスクロスが好調な販売を続けている。日本自動車販売連合会(自販連)のデータでは、車名で統合されてしまうためヤリスに合算されているが、9月にはヤリスは2万2066台の販売台数を記録、11月も1万9921台と堂々とトップをキープしている。8月はほぼヤリスのみで1万1856台だったので、ヤリスクロスが加わったことで大きく販売台数を伸ばしたことになる。
2020年11月のランキングを見ると、2位に1万0627台でライズが入っていて、兄弟車のダイハツ ロッキー(1400台)と合わせると、両車で1万2027台も売れている。
どちらもBセグメントの新しいコンパクトSUVで、実は車両価格も近いライバル関係となっている。ヤリスクロス Z(FF)の221万円に対しライズ Z(FF)は206万円、その差はたった15万円といった具合だ。
ただし、ハイブリッドモデルが欲しいとなると、ライズには設定されていないのでヤリスクロスを選ぶことになるが、その場合は価格は30万円以上高くなってしまう。
トヨタ ヤリスクロスの車両価格(税込み)
X:189万6000円G:202万円
Z:221万円
X(4WD):212万7000円
G(4WD):225万1000円
Z(4WD):244万1000円
ハイブリッドX:228万4000円
ハイブリッドG:239万4000円
ハイブリッドZ:258万4000円
ハイブリッドX(4WD):251万5000円
ハイブリッドG(4WD):262万5000円
ハイブリッドZ(4WD):281万5000円
トヨタ ライズの車両価格(税込み)
X:167万9000円
X S:174万5000円
G:189万5000円
Z:206万円
X(4WD):191万8800円
X S(4WD):198万4800円
G(4WD):213万3700円
Z(4WD):228万2200円
ボディサイズを比べると、ヤリスクロスの全長が4180mmに対し、ライズは3395mmと4m以内に納まっている。ライズのほうが大きく見える気もするが、それは全高の高さとフロングリルの大きさからそう感じられるのではないだろうか。
実際、全高はヤリスクロスは1590mm、ライズが1620mmと30mmも違う。ヤリスクロスはハッチバックのヤリスから派生したモデルのため1600mmを切るが、ライズの車高は微妙なところだろう。というのは古いタワー式駐車場では、入庫できる車高の高さを1600mmで制限している場合があるからだ。
次にパワーユニットを比較してみたい。ヤリスクロスは、ヤリスから採用した新開発のM15A型を採用。トヨタでは久々のM系のネーミングを冠したシリーズだが、もちろん旧型M系とはまったく関係がなく、3気筒の1.5Lエンジン。ライズはダイハツが開発した車両のためエンジンもダイハツの1KR型のターボ付きの3気筒1Lエンジンとなる。
ここで差がつくのが自動車税だ。ヤリスクロスは1.5L未満なので年額3万0500円なのに対し、ライズは1L未満なので2万5000円と5000円以上の差になる。年額で5000円程度の差なので無視できるという人もいるだろうが、毎年のことなので、仮に10年乗り続けるとすると5万円以上の差になってくる。
では肝心のドライブフィールはどうか。今回は1.5L 直3エンジンを搭載するヤリスクロス Z FFと1L 直3ターボエンジンを搭載するライズ Z FFを比較してみた。
ヤリスクロスに試乗する前にベースとなったヤリスの印象をちょっと紹介したい。パワートレーンまで新開発ということで期待を持ってヤリスに乗ったのだが、残念ながらアイドリング時の振動や雑味感のあるエンジン音など、3気筒の悪い面が気になってしまった。その後は発売されたヤリスクロスは、エンジン生産ラインの習熟度が高まったからなのか、ヤリスよりずっといいフィーリングになっていたが。
その点、ライズの1KRターボは多くのモデルに搭載されているため熟成されていて動力性能ではヤリスクロスをしのぐトルク感で加速してくれる。3気筒の振動も抑え込まれ、ターボらしいスポーティなフィールもある。若干、低回転域でトルクが細いというかレスポンスが鈍い場面もあるが、総じて活発に走ることができる。
トランスミッションはどちらも効率高めるギア駆動付きのCVTを採用しているが、メカニズムは別物。CVTの差よりエンジンそのもの差が大きく、パワートレーンの軍配はライズにあげたい。
一方、ライズの弱点はサスペンションに起因すると思われる低速域の乗り心地の粗さだ。まるで足が突っ張ったような感じで、リバウンド時にはわずかながら車体に伝わる振動を感じることもあり、走りの質感があまり高くないのが残念。マイナーチェンジ後のライズ/ロッキーには試乗していないが、変更内容にサスペンションは含まれていないようだから、従来のままの可能性がある。
総合的に見るとベストバイはヤリスクロス。乗り心地やハンドリングなどがよく、先進安全装備と快適装備が充実しているからだ。これでエンジンが熟成されれば、さらに人気は高まると思う。ライズはリアシートの開放感が高いが、乗り心地が気になるポイントだ。(文:丸山 誠)
トヨタ ヤリスクロス Z FF 主要諸元
●全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1140kg
●エンジン:直3DOHC
●排気量:1490cc
●最高出力:120ps/6600rpm
●最大トルク:145Nm/4800-5200rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トーションビーム
●タイヤサイズ:215/50R18
●WLTCモード燃費:18.8km/L
●最小回転半径:5.3m
●乗車定員:5名
●車両価格:221万円
トヨタ ライズ Z FF 主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:980kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●排気量:996cc
●最高出力:98ps/6000rpm
●最大トルク:140Nm/2400-4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トーションビーム
●タイヤサイズ:195/65R16
●WLTCモード燃費:18.6km/L
●最小回転半径:5.0m
●乗車定員:5名
●車両価格:206万円