2008年5月、メルセデス・ベンツのオープンモデル、SLとSLKがフェイスリフトを受けて相次いで日本に上陸した。ともにデザイン変更だけでなくエンジンのパワーアップや新しいテクノロジーを盛り込んだ大掛かりなもので、とくにSLは6.2L V8エンジンを搭載したSL63AMGを新たに設定している。今回は裏磐梯で行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

高いシャシ性能の上に成り立つSL63AMGの素晴らしい走り

というわけで改良部分の多いSLK200K、SLK350、そして新たに追加されたSL63AMGを試していったが、正直なところSL63AMGのあまりの完成度の高さにすっかり魅了されてしまった。

もちろんSLKも進化の幅は大きく十分に魅力的だ。200Kはまだ潤沢とは言えないものの、それでもパワーアップは体感できるし、これが350となれば高回転域でグイグイと盛り上がるパンチと、アクセルレスポンスの抜群の冴えを楽しめる。

ダイレクトステアリングは、ハンドル操作角で左右6度までは15.8とややスローなギア比、6度から100度ではギア比が15.8〜11.5と変化することでシャープな回頭性をもたらし、パーキングなど低速域での切り角となる100度以上では11.5のギア比で取り回しを助けるというもの。速度感応など複雑な制御を使わず、ラックのピッチを不等とすることで成立させたシンプルな機構だが、これがめっぽう扱いやすく、フィーリングも自然なのには感心した。

でも、それもこれもSL63AMGの前では霞んでしまうのだ。このクルマ、スペックからスパルタンなスポーツモデルを想像するが、乗り心地は常識的な快適さを備えているし、ハンドリングも非常に寛容だ。今回の試乗ステージとなった中速コーナーが続くドライのワインディングでは、限界に近づくと徐々にフロントからアウトに逃げ始め危険を知らせてくれた。したがって存分に攻められる。冗談抜きでSLのボディがコンパクトに感じるほど軽快に楽しめるのである。

AMGスピードシフトMCTの出来にも脱帽だ。シングルクラッチながら反応速度を最大0.1秒まで詰めたことにより、デュアルクラッチ式とまったく遜色のないレスポンスとスムーズさを実現している。ブリッピングを伴うパドル操作で小気味よいダウンシフトを楽しんでいたら、ついつい時間が経つのを忘れてしまった。

さらに、この後で試したSL350もSL63AMGとはまた違った良さがあった。足まわりの設定は緩いしパワーも較べれば手頃だが、こちらも振り回して楽しめる。このような懐の深い走りは、やはりSLの高いシャシ性能の上に成り立っていると考えてよいだろう。

今回の大幅改良でエンジンやトランスミッションがさらに強化されたSLは、その魅力を数倍にも増幅してみせたというわけだ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2008年8月号より)

画像: SLK350はエンジンも改良。動弁系のリファインと新型インテークマニホールドの採用、高圧縮比化などにより44psの向上を果たした。

SLK350はエンジンも改良。動弁系のリファインと新型インテークマニホールドの採用、高圧縮比化などにより44psの向上を果たした。

ヒットの法則

メルセデス・ベンツ SL63AMG 主要諸元

●全長×全幅×全高:4600×1820×1300mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1990kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:525ps/6800rpm
●最大トルク:630Nm/5200rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AMT
●車両価格:1910万円(2008年)

メルセデス・ベンツ SLK350 主要諸元

●全長×全幅×全高:4110×1810×1300mm
●ホイールベース:2430mm
●車両重量:1500kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:305ps/6500rpm
●最大トルク:360Nm/4900rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:7速AT
●車両価格:743万円(2008年)

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