2008年、メルセデス・ベンツML、R、GLクラスに搭載された新世代ブルーテックが大きな注目を集めた。尿素水溶液を使ったアドブルーインジェクションタイプとなり、全米の排出ガス規制Bin5もクリア。画期的なメカニズムの登場だった。ここではもっとも排出ガス規制の厳しいアメリカ・バーモント州で行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年9月号より)
アドブルーを排出ガスに噴射してNOxを処理
燃料価格の急激な上昇や環境意識の高まりにより、世界中でいまクリーンなディーゼルモデルに注目が集まっているのはご存知の通り。
ただ、日米欧の主要マーケットでの排出ガス規制は、その規制数値に大きな違いがある。この統一性のなさが各自動車メーカーにとって頭を悩ます問題となっていた。たとえばヨーロッパでは普通に走っているディーゼルモデルが、日本やアメリカ市場では販売できないものも多い。2006年から北米市場に導入されているE320ブルーテックも、カリフォルニアなど5州では、州の排出ガス規制をクリアできず、販売できないという現実もある。
今回、メルセデス・ベンツが北米マーケットに投入したクリーンディーゼル「ブルーテック」は第2世代と呼ぶべきもので、来年から全米で随時実施予定の排出ガス規制「Tier2Bin5」に適合する世界初のディーゼル乗用車となる。それゆえ、このモデルは50州すべてで販売が可能となる。
厳しいBin5基準をクリアするために、ML/GL/RのSUVモデルに導入された新しい320ブルーテックは、NOx対策としてAdBlueインジェクション方式と呼ばれる技術を採用する。
これはアドブルー(尿素水溶液)を予備浄化済みの高温の排出ガスに噴射してアンモニアを発生させ、それを還元剤として触媒コンバータを通過する際に排出ガス中のNOxを無害な窒素に還元する技術。すでに大型バスやトラックなどディーゼル商用車では一般的だが、乗用車としては世界初だ。