静粛性と低速トルク、まさにグリーンな贅沢
今回、試乗が行われたのは、現在アメリカでもっとも排出ガス規制の厳しい5州のうちのひとつ、バーモント州。さっそくMLに乗り込む。今回のブルーテック搭載を機にフェイスリフトを果たし、よりメリハリの効いたエクステリアを手に入れている。
ハンドル奥、右手側にある大型のスタートボタンを押しエンジンを始動させる。このエンジンはE320CDIなどに搭載される3L V6ディーゼルターボがベースとなるが、ブルーテック化に伴いピストン形状の見直しや圧縮比を従来の17.7から16.5に変更するなどの改良を施している。
アクセルペダルを軽く踏み込む。とにかく低回転からの圧倒的なトルク感と、その静粛性には驚くばかりだ。7Gトロニックの滑らかな変速とエンジンの力強さのコラボは、燃費の良さだとか環境性能の高さを理屈で考えるより前に、積極的にブルーテックを選びたくなる上質感に包まれている。
中高速域で走行中、さらに加速したいといった場面でも、アクセルペダルを踏む右足に少し力を加えるだけでよい。メルセデス・ベンツのエミッションレギュレーションのマネージャーであるミハエル・アングル氏と歓談した際、このブルーテックモデルを「グリーンな贅沢」と評していたが、まさにその言葉がぴたりとくる味わいを持っている。
路面の悪い場所でも適度にいなすゆるさと、ハンドル操作に的確な動きをする応答性のバランスも気持ちがよい。ここはフェイスリフトに伴い、MLクラスが熟成された証だろう。しゃかりきになって攻めるようなシャープさは持ち合わせていないが、余裕あるドライビングというSUVらしい走り味に、より磨きがかけられている。ちなみに今回、一般道を約220km走った際の燃費は26.1MPG(マイルパーガロン/約11.0km/L)だった。
アドブルー(尿素水溶液)の平均消費量は100km走行あたり0.1Lという。荷室スペース下に補給口のあるML320ブルーテックのアドブルータンク容量は28L。つまり1回の補充で2万8000kmもの走行が可能なため、定期メンテナンス以外で補給を気にかける必要はない。また残量が一定レベルを下回った場合は警告灯で知らせてくれるので、アドブルーが空になりNOxが還元されないまま汚い空気をまき散らして走行してしまうという最悪の事態は起きない。
アメリカの厳しいBin5基準に適合したこのモデル、すでに今後ヨーロッパで実施予定の排出ガス規制であるEU6にも対応しているという。明言はなかったが、このことから来年から日本で施行されるポスト新長期規制にも大幅な改良を施すことなく対応可能なのではないかと推測できる。
日本への導入はどうなるのか。前出の通り、このディーゼル技術は商用車ではすでに採用されており、尿素水溶液補充などのインフラは日本でも整っているため、導入の障害はない。
メルセデス・ベンツ日本の正式なコメントはまだないが、早ければ年内にも日本に導入される可能性もある。(文:Motor Magazine編集部)
メルセデス・ベンツ ML320 ブルーテック 主要諸元
●エンジン:V6DOHCディーゼルターボ
●排気量:2987cc
●最高出力:210ps/3400rpm
●最大トルク:540Nm/1600−2400rpm
●ボア×ストローク:83.0×93.0mm
●圧縮比:16.5
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:7速AT(7Gトロニック)
●燃料タンク容量:95L
●AdBlueタンク容量:28L
※欧州仕様