ハッチバックモデルにはない多彩なシートアレンジ
2002年の登場以来、全世界での販売台数が90万台を超えるヒット作となったプジョー307SW。その後継モデルとなる308SWが、ハッチバックの308の日本上陸からわずか4カ月という非常に早いタイミングで登場した。
308SWは、308と共通のプラットフォームを用いながらホイールベースを100mm、リアオーバーハングを125mm伸長。全長は4515mmと先代よりも95mm長いボディが与えられた。広いガラスルーフを持つ3列7人乗りというコンセプトは継承されている。
ベースグレードの「プレミアム」、本革シートなどの豪華装備を持つ「グリフ」と2種のグレード展開となるが、搭載されるエンジンは1機種のみ。140ps/240Nmを発生する1.6L直噴+ツインスクロールターボのEP6DT型で、これに4速ATが組み合わされる。
先代307SWは車高が高く、ある意味ミニバン的だったのに対し、308SWは全幅を先代比で60mm拡大しながら全高を25mm下げ、よりスポーティなスタイリッシュワゴンに変貌した。ただしシャープで男性的なフロントデザインに対し、独特なクオーターガラス形状やテールランプデザインなど、ふくよかで女性的なリアデザインを与えられたところは、好みが分かれる部分だろう。
ラゲッジスペースの開口部は地上高548mmと低く、大きな荷物の出し入れもしやすい。またリアガラスハッチのみで開閉可能と、ワゴンとしての使い勝手は非常に良い。
室内に目を向けると、ハッチバックモデルと同様に質感の高いインテリアがまずは目を惹く。標準で装備されるガラスルーフは総面積1.68m2を誇り、シェードをすべて開けるとプジョー車らしい明るい空間を楽しめる。試乗会の当日は9月とはいえ気温は30度を超えていたが、紫外線カット率99%、赤外線カット率86%というガラスルーフのため、シェードを開けていても暑さは感じなかった。
プジョー躍進の立役者だった307SWの、正常進化モデルが308SW
308SW最大のウリは、ハッチバックモデルにはない多彩なシートアレンジだろう。2列目は先代同様独立3座で、個別に90mmもの前後スライド、および6段階のリクライニングができる。この2列目シートは積載する荷物の量や大きさに合わせて、ダブルフォールドすることも取り外すことも可能。さらに助手席のシートバックを畳めば、3.1mもの長さの荷物も運ぶことができる。
3列目シートも取り外し可能で、シートバックを折り畳めばフラットとなり積載にも邪魔にならない、と言った具合。荷室は508L(2列目通常使用・3列目取り外し時)~1736L(2列目・3列目取り外し時)と、セグメントを超えた容量を誇り、荷物の大きさや量に合わせてフレキシブルに対応する。
先代に比べて室内長が増えたとはいえ、3列目シートのレッグスペースは小さく、シート座面とフロアの高さに差が少ないため、大人が座るとどうしてもひざを抱えるような、無理な着座姿勢となってしまう。3列目シートの2座はあくまで緊急用と割り切ったほうがよいが、その3列目の2座を含むすべての座席に3点式シートベルトが用意されているところは、プジョーの安全に対する真摯な姿勢が伺える。
車両重量はハッチバックより200kg増の1560kgとなるが、低回転から最大トルクを発生するエンジン特性もあって、動力性能に不足はない。スペック的には前時代的な感もある4速ATもギクシャク感は皆無。日常使用において不満に感じることはないだろう。
最大7人もの乗員や大量の荷物を積載可能という308SWの特性に合わせ、足まわりは専用のチューニングが施されている。そのためか1人乗車&空荷で一般道を試乗した際は、ハッチバックの308に比べると路面ギャップのアタリが強く感じられた。ただしペースを上げていくにつれ、しっとりとした深い走り味へと変化していくのが面白い。コーナーをヒラリヒラリとクリアしていくあの軽快感は薄まっているが、逆に落ち着きのある大人の走りを手にしている。
日本での307SWは、ハッチバックと同等の台数を販売するプジョー躍進の立役者だった。そのコンセプトを受け継ぎ、正常進化させたのが308SW。なかなかいいクルマです。(文:Motor Magazine編集部/写真:堀越 剛)
プジョー 308SW プレミアム 主要諸元
●全長×全幅×全高:4515×1820×1560mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:103kW(140ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):389万円(2008年当時)