ソフトでやさしい乗り味、燃費の良さもポイント
この秋は軽自動車の新車ラッシュだ。その中で先陣を切ったのがダイハツのムーヴコンテ。TVCMで「かくかくしかじか、四角いムーヴ」と連日流れているからご存知と思う。
どんなクルマかといえば、ムーヴとタントのいいとこどりをした上で、快適・ラクチン装備を施したバリエーションということになる。全高は1645mmでこれはタントより10cm背が低いが、タワーパーキングには入らない。制限高はほとんど1550mmまでのところが多いからだ。
そんなことより「空間が広いこと」が現在の軽自動車にとってはもっとも重要なこと。室内空間のたっぷりある「スペース系軽乗用車」は販売比率の70%を超えているのだ。
試乗会で実車を見るとほんとうに四角い。こうなるとかっこいいとか悪いとか言いがたく、好きか嫌いかに意見が分かれそうだ。
個人的にはエクステリアはシンプルで無駄な飾りがない点に好感。このあたりスズキのラパンもそうだが、「チープシック」なのだ。光りものを下手に多用すると、実は本当に「チープ」に見えてしまうものだ。これはインテリアも同様で、シックな仕上がりになっている。
シートアレンジは4通りある。フロントシートのヘッドレストを外してシートバックを倒すと「ロングソファーモード」、助手席だけ倒して長尺の荷物を運ぶ「フロントサイドフラットモード」、リアシートの片側を前に倒し3名乗車で荷物を運ぶ「ハーフラゲッジモード」、両方とも倒すと「フルラゲッジモード」となる。
試乗会は千葉・幕張周辺。コンテの上級グレード、Xリミテッドのシートに座り、ポジションを決める。「おお、電動パワーシートが付いているではないか」。これは軽乗用車初の試みという。以前からあればいいのにな、と思っていたがコンテが第1号となった。ただし前後スライドのみで、リクライニング機能は電動ではない。
ヒップポイントは633mm(ムーヴと同じ)と高めの設定に加え、なにより四隅の見切りが素晴らしくいい。この運転席からの視界はどこかで見たような、と思い出したらレンジローバーのそれに近かった。吃立したフロントウインドウ越しにボンネット先端がよく見えるクルマは、ビッグSUVであれ軽自動車であれリラックスできるのだ。
大振りなフロントシートは軟らかめで座り心地がいい。頭上はタントほどスカスカではない。タントのリアビューミラーは前方視野の遥か上にあり、目線の移動が煩わしかったが、コンテは適切だ。
コラム式のシフトレバーをDレンジにセットしてそろそろと走り出す。第一印象はかなり静かなことと、乗り心地がソフトでラクチンだということ。エンジンはロングストロークの直3DOHC・58ps。出力特性、燃費ともトップレベルのパワーユニットだ。ただし急加速時にはCVTのノイズが若干侵入してくる。
コンテのベースとなったムーヴは軽自動車中最長のホイールベースを持ち、プラットフォームの完成度が高い。なので、ブレーキ性能も含めて、ハンドリングにこれといった不満は出てこない。このコンテはムーヴブラザーズの中ではもっともソフトライドである。
やさしく運転できてソフトな乗り味、そして低燃費であることが、軽自動車には好ましい。とはいえ、もっとアグレッシブなドライビングをしたいというユーザーには「コンテカスタムRS」というバリエーションがある。直列3気筒エンジンはターボ化され64ps/10.5kgmのスペック。momo社製の革巻きステアリングホイールや165/55R16インチのタイヤを標準装備。高価格車ゆえノーマルのコンテよりも遮音/吸音材が多用されているので走行時の静粛性がグンと高い。足まわりは固められているが、ガチガチではなく、乗り心地は悪くない。常に追い越し車線を走りたいユーザーはこの速いコンテをどうぞ。(文:Motor Magazine編集部/写真:村西一海)
ダイハツ ムーヴ コンテ X リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1645mm
●ホイールベース:2490mm
●車両重量:850kg
●エンジン:直3 DOHC
●排気量:658cc
●最高出力:43kW(58ps)/7200rpm
●最大トルク:65Nm/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):128万1000円(2008年当時)