乗ってみたいクルマは、誰もがスポーツカーやワゴンを選ぶとは限らない。コンパクトなモデルでも、次々と気になる存在が登場してきているのだ。ここでは、時流に合わせてモダナイズされた趣深きふたつのモデル、シトロエン C3とアウディ A1シティカーバーに注目した。(Motor Magazine 2021年4月号より)

どちらも走りに不足なし。まず体験して真価を知る

アウディA1シティカーバーのエンジンは1L直列3気筒だが、ターボチャージャー装着によって最大トルク200Nm、最高出力85kW(116ps)を発揮する。車重は1210kgあるが、2Lの自然吸気エンジンクラスの最大トルクを発揮できるから問題ない。ちなみにトランスミッションは7速DCTである。

低いエンジン回転域からトルクがあるので、通常の領域ではアクセルペダルを踏み込む量に比例した加速感が味わえる。もっと深く踏み込んだ場合は、グイーンという音とともに、回転の上昇を待つ感じにはなるが、それでも気持ち良いペースで山道を走り抜けることができた。Dレンジのままでも、ハンドルの裏にあるパドルシフトを使うと、コーナーの立ち上がり時に遅れがなく気持ちのいい加速がタイミングよく味わえる。

一度こういう走りを経験してしまうと、たとえ息子や娘のために買ったクルマであっても、休日は取り上げて自分でドライブに出かけてしまいたくなる。軟弱な買い物専用モデルではない、ということに気づいてしまったからだ。

シトロエンC3も3気筒エンジンだが、こちらは1.2Lターボ仕様。最大トルク205Nm、最高出力81kW(110ps)を発揮する。車重はA1シティカーバーより若干軽い1160kgである。アクセルペダルを踏み込むと、モコモコっとトルクが湧いてくる感じだ。レッドゾーンは5500rpmから始まるが全開にしてもその手前でシフトアップする。そしてこちらも、この車重を引っ張るのに不足はない印象だ。

A1シティカーバーの運転席に座ると、意外にもドライバーオリエンテッドな設定だということがわかる。ダッシュボード中央のモニター画面やその下のエアコンスイッチ類はドライバー側に向いている。このリミテッドエディションのインストルメントパネルは、地図情報や車両情報、エンターテインメントなどを大きく表示することのできるバーチャルコックピット仕様とされる。

ライトスイッチも一歩進んだ考え方だ。通常はオートモードで日中はデイタイムランニングライトを使うが、オートの表示があるスイッチを押すと順にロービーム、スモール、オフ、オートを繰り返す。霧が出てきたようなケースでは、まだ明るくてもヘッドライトを点けたいときがある。デイタイムランニングライト状態ではテールランプが点灯しないからだ。そんな場合は、ライトスイッチを押すとロービーム点灯にできる。

画像: 市街地走行の快適さも特徴だが、コーナリングを楽しむこともお手のもののC3。

市街地走行の快適さも特徴だが、コーナリングを楽しむこともお手のもののC3。

人生をどう満喫したいか。それぞれ異なる楽しみ方

A1シティカーバーで山道を走ると、まるで熟成されたA1スポーツバックのような印象を受ける。サスペンションに遊びがなく、しっとりしながらもガッチリ受け止めてくれるのだ。ドイツ車的にサスペンションが理論的に動いてくれて、コーナリング時にロール角は小さく、ダイレクト感たっぷりなので挙動がわかりやすい。

そしてC3は、しなやかな足まわりが何よりフランス車らしく感じられる。とくにコーナリングの場面は、シトロエン車の真骨頂だ。ロールはするが穏やかに傾いていき、大きくなり過ぎないのでワインディング路で気持ち良く走れる。コーナリング中にアンダーステアっぽくならないのもいい。クルマ自らが曲がってくれるような感じで、FFじゃないみたいだ。

直進からターンインするときは、滑らかにノーズをインに向けて曲がっていく。その時にハンドルを切り足してもついてくる。ハンドル中立の遊びは小さく、小舵角から効く。操舵力は軽い方だが舵角度くらいまで切ると反発力がちょっとバネっぽくなってくるが、舵角に対する正確性は良い。

乗り心地にも、同じようにC3独特の味がある。その粘るようなサスペンションの動きが好きだ。ここは、大きな個性になると思う。大きな上下動でも、どこがフルバンプなのかわからないというところが凄い。さらにこのC3シャインが257.5万円と聞くと、随分とお買い得な感じがする。

今回乗り比べてみて、ハンドリングを楽しむことで人生を満喫できるなら、意外かもしれないがシトロエンC3がいいと思う。感覚的に捉えて動かすのが合っているからだ。そして、アウディA1シティカーバーは教科書のような出来栄えで、クセのないハンドリングだから乗る人を選ばないとも言える。ビギナーからベテランまで幅広く受け止めてくれるので、家族の誰もが同じ感覚で運転できるところがメリットだ。(文:こもだきよし/写真:井上雅行)

画像: A1シティカーバーリミテッドエディション(左)は1L直3ターボエンジンを搭載。1Lターボエンジン搭載のA1スポーツバック25TFSIに対して高出力版の30TFSI仕様だ。C3は1.2L直3ターボエンジン。

A1シティカーバーリミテッドエディション(左)は1L直3ターボエンジンを搭載。1Lターボエンジン搭載のA1スポーツバック25TFSIに対して高出力版の30TFSI仕様だ。C3は1.2L直3ターボエンジン。

アウディ A1シティカーバー リミテッドエディション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4050×1755×1485mm
●ホイールベース:2565mm
●車両重量:1210kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:999cc
●最高出力:85kW(116ps)/5000-5500rpm
●最大トルク:200Nm/2000-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●WLTCモード燃費:15.3km/L
●タイヤサイズ:205/55R17
●車両価格(税込):483万円

シトロエン C3シャイン 主要諸元

●全長×全幅×全高:3995×1750×1495mm
●ホイールベース:2535mm
●車両重量:1160kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●総排気量:1199cc
●最高出力:81kW(110ps)/5500rpm
●最大トルク:205Nm/1750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・47L
●WLTCモード燃費:17.2km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●車両価格(税込):257万5000円

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