2030年には世界中でFCEVは1000万台を超える!?
ジャガー・ランドローバーは、2021年2月に発表した「REIMAGINE(リ イマジン)」戦略に沿って、15年後の2036年までにテールパイプからの排出ガス量をゼロにし、2039年までにサプライチェーン、製品、オペレーションのすべてを通じて排出ガス量を実質ゼロにするという目標を掲げており、「プロジェクト ゼウス」はその実現に向けた取り組みのひとつだ。
ディフェンダーをベースにした水素燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)のシステムは、トヨタやホンダが開発し、市販化を進めているものと基本的に同じだ。充填した水素を大気中の酸素と反応させて電気を生成し、モーターを駆動する。FCEVはBEV(バッテリー電気自動車)を補完することができる。
FCEVはモーターを動力源とし、高いエネルギー密度と短時間での水素補給、そして気温の低い状態でも航続距離のロスを最小限に抑えることができるため、より大型で長距離走行を求められる車両や、高温、低温の両環境下で使用される車両に最適な技術だ。つまり、ディフェンダーのような本格派のクロスカントリー4WDにも適しているというわけだ。
IEA(国際エネルギー機関)によると、2018年以降、世界中のFCEVの走行台数はほぼ倍増しており、また、水素充填ステーションも20%以上増加している。水素協議会では、2030年までに水素を使用するFCEVの台数は全世界で1000万台を超え、水素充填ステーションの数も1万カ所を超えると予測している。
「プロジェクト ゼウス」は、英国政府が支援する低炭素排出パワートレーン技術の研究開発支援団体である「アドバンスド プロパルジョン センター(Advanced Propulsion Centre:高度推進センター)」から部分的に資金提供を受けており、エンジニアたちは、航続距離、水素補充、牽引、オフロード走破能力などのユーザーが期待するパフォーマンスを提供するために、どのように水素パワートレーンを最適化すべきかを研究している。
現在開発中のディフェンダー FCEVは、2021年末にはプロトタイプでの走行テストを英国で開始し、オフロード性能や航続可能距離などの主要特性を検証する。なお、「プロジェクト ゼウス」では、デルタ・モータースポーツ、AVL、マレリ・オートモーティブ・システム、英国電池産業化センター(UKBIC)など、世界有数のR&Dパートナーと協力し、FCEVプロトタイプの研究、開発、製造を行っている。
ジャガー・ランドローバーで水素およびFCEVを担当・統括するラルフ・クレイグは、次のように語った。
「私たちは、輸送業界全体の将来的なパワートレーン構成において、水素が重要な役割を果たすということを十分理解しています。FCEVは、BEVと並び、ジャガー・ランドローバーがグローバルで展開するモデル ラインアップに求められる特有の性能やニーズに対応しながら、ゼロエミッションを実現する新たなソリューションです。『プロジェクト ゼウス』におけるパートナーとの共同作業は、次世代のテールパイプから排出ガスを出さないクルマの準備を推し進め、さらに2039年までにビジネス全体を通しても排出ガス量を実質ゼロにするというジャガー・ランドローバーの目標の実現に貢献するでしょう」
なお余談だが、日本のFCEVでは、トヨタ ミライは2020年12月にフルモデルチェンジされて以降その販売台数を伸ばしているが、ホンダ クラリティは販売不振と工場再編成のため2021年いっぱいで生産中止が決定している。