超高速で、長いストレートの直後にシケインが待ち構えるコースレイアウト
7月6日にプジョーがル・マン ハイパーカー「プジョー9X8ハイパーカー」を発表したことから、ハイパーカーに注目が集まっている。ハイパーカーはWECの新しい車両規定で、従来のプロトタイプカーほどコストがかからず、市販のスーパーカーの延長線上にあるハイパーな車両で参加できることから、プジョーのほか、今後、ポルシェやフェラーリ、アウディ、ランボルギーニなどの参戦も予定されている。
そんなハイパーカー元年となるWEC2021年シーズン、簡単ではないレース展開が続く中、ハイパーカーのトヨタGR010 HYBRID 8号車(中嶋一貴/セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー)がここまでベルギー・スパとポルトガル・ポルティマオの2戦を制している。
ただ2戦ともスリリングでドラマティックな戦いとなっており、モンツァの1戦も一筋縄ではいかないレースとなりそうだ。「トヨタの3連勝濃厚」というのが大方の予想だが、果たしてそうだろうか。とくにモンツァの超高速で、長いストレートの直後にシケインが待ち構えるコースレイアウトは、ハイブリッドでしかも追加の車両重量が課せられるトヨタにとって厳しいレースとなるかもしれない。ファンはもちろん、今後参戦を予定しているメーカーにとっても注目の1戦となる。
モンツァ6時間レースのポイントはもうひとつ、人数は限られるが、サーキットに観客が戻ってくること。通常であればル・マン24時間レースが開催されるはずのこの時期、8月21日-22日に開催が延期されたル・マンに向けても、トヨタにとっては快勝したいところだろう。
TOYOTA GAZOO Racing WEC チームの村田久武代表は「ファンの皆様の前で再びレースができることが楽しみで仕方ありません。イタリアの情熱的なモータースポーツファンの皆様を再び迎えることができ、モンツァは素晴らしいレースになるでしょう。モンツァのトップスピードは高速で、ハードなブレーキングゾーンもあるためGR010 HYBRIDにとって過酷なレースとなりそうですが、チーム全員が今回の挑戦を楽しみにしています」とコメント。ドライバーは次のようにコメントしている。
小林可夢偉(トヨタGR010 HYBRID 7号車)
「モンツァは高速コースになりますが、レギュレーション上、シーズン中に空力セッティングを変更することができないので、シーズン開幕前に決めたセッティングでここをどう走るかがポイントになります。モンツァとしてはハイダウンフォースのマシンで走ることになるので、ドライバーとして楽になりますが、最高速は伸びないことになります。モンツァはル・マンのコースに似た部分もあり、またル・マン前の最後のレースでもあり、とても重要なレースウィークです。全てを着実にこなして、GR010 HYBRIDの性能を引き出し、信頼性を確認するとともに、我々自身の準備も整える必要があります。今大会から観客が戻ってくるのは素晴らしいことですし、イタリアのファンの皆様の前でエキサイティングなレースを見せることができたらと思っています」
中嶋一貴(トヨタGR010 HYBRID 8号車)
「WECは難しいレースです。異なるテクノロジーのマシンをレギュレーションで同じ速さにしているわけですが、それはレースを見る人にとっては楽しいし、レースを戦う立場としても歓迎すべきことだと思います。ただマシンによって速いところが違うので、どこで差をつけるか、どこで抜くか、トラフィックをどう処理するかが問題になります。モンツァはブレーキングや縁石通過、そして荒れた路面でのトラクションなど、簡単なコースではないだけに、我々のハイパーカーがどれだけのパフォーマンスを見せられるのか楽しみです。GR010 HYBRIDへの理解はどんどん深まってますが、ル・マンに向けての準備の助けにもなってくれるでしょう」
モンツァ6時間レースは7月16日金曜日午後(15時30分)の公式練習走行で開幕。17日土曜日の2回の練習走行に続き、スターティンググリッドを決定する予選が18時(日本時間18日01時)から行われ、18日の現地時間12時(日本時間19時)に決勝レースのスタートが切られる。