スポーティカーに多く採用されたSUキャブレター
1940年代にイギリスのスキナー・ユニオン社で開発された可変ベンチュリー式のキャブレターのことで、その社名Skinners Unionの頭文字からSUキャブという名称となっていた。日本では日産自動車のグループ企業である日立がライセンス生産をしていたことで、日産のスポーティ車にSUツインキャブが使用されていた。
具体的な構造としては、サイドドラフト式キャブレターのベンチュリー部に燃料を供給するジェットがあり、ベンチュリーの上部にはジェットニードル(針を使用した弁)を備える上下可動式のピストンバルブがある。ジェットニードルはそれがジェットに刺さるように配置されている。燃料の量は、ニードルジェットから引き抜かれるジェットニードルのテーパー部によって大きさが変わる。
ピストンバルブは吸入負圧の一部を利用して動くようになっているから、ベンチュリーの口径がピストンバルブの上下動で変化する。これが可変ベンチュリー式と呼ばれるゆえんだ。結果として、口径の大きさを連続的に調整でき、吸気(アクセル開度)に応じてガソリンの量を合わせられるので、フレキシブルな燃料供給をできるようになっている。
スロットルバルブ開度が小さい低負荷時には、小口径のキャブレターとなり、スロットル開度が大きいときは大径のキャブレターとなるとも言えるわけで、口径の変化が大きなポイントだ。この方式とすることで、可動式ピストンバルブに対応するベンチュリー部のジェットに対する負圧の変化が少なく、ガソリンと空気との混合比も保てるような仕組みだ。
ピストンバルブが上昇してベンチュリーが大口径になったときは、ニードルが抜けて大きくなったニードルジェットの穴から、多くの燃料が吸い出される。低回転から高回転までを1つのメインジェットだけでカバーできるというわけだ。
SUキャブレターはガソリン供給量を調整できる点で優れたシステムだったが、排出ガスをきれいにするのが難しく、いつしか姿を消した。排出ガス浄化のために重要な予備混合が機構上できなかったのだ。ベンチュリー部に吸い出された液状のガソリンが、いきなり空気に混ぜられてインテークマニホールドへ流れ込んでいくと、ガソリンの細かい粒子が気化して均一な燃焼ガスになりにくいという欠点は克服できなかった。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治/参考文献:自動車のメカはどうなっているか エンジン系・グランプリ出版)