ジャガー史上最強の8気筒エンジンが搭載された2モデル
ちょっと古めのユニットを巧みにリファインし、歴史と伝統に支えられたこのブランドに相応しい味わいを演出する。これまでのジャガー車のエンジンに対し、そうしたイメージを抱いていた人は決して少なくはないだろう。だがここに来て、そうしたフレーズは一足飛びに「今は昔」のものになろうとしている。ジャガーとしては実に12年ぶりという完全新開発の8気筒エンジンが2009年初頭のタイミングで発表され、それを搭載する新モデルが続々リリースされ始めたからだ。
「周辺ライバル車との競合関係も考えて」と排気量を拡大させたエンジンには、その他の最新テクノロジーも満載。ブロックは軽量コンパクト構造で、ヘッドにはセンター噴射式のスプレーガイド直噴システムを採用。吸排気系には、エンジントルクで駆動することでレスポンスを飛躍的に高めた可変カムシャフトタイミングシステムが導入され、自然吸気ユニットにはホンダVTECばりの可変カムプロフィールシステムも採用といった、いかにも最新世代のエンジンらしい凝ったデザインが採り入れられている。
最高で510psというパワーを発する強力版ユニットには、過給器に機械式のスーパーチャージャーが用いられた。今の時代に出力向上と効率アップを狙うエンジンを開発すれば、そこに用いるべき過給器はエンジントルクを消費する機械式ではなく、捨てられる排気エネルギーを回収再利用するターボチャージャーこそが当然とも考えられるが、現在のジャガー社のパワーユニット開発プログラムは、ランドローバー社との協力体制の下に実施されている。そう、レンジローバーなどランドローバー各車への搭載を考えれば、過給器にはレイアウトの自由度が大きいメカニカルスーパーャージャーの方が相応しいというわけなのだ。
そんなジャガー史上最強の8気筒エンジンが搭載されたのは、XFRとXKRという、今年(2009年)の北米モーターショーで発表されたモデル。いずれも、新開発の電子制御可変減衰力ダンパー「アダプティブダイナミックス」を標準採用し、電子制御によるLSDメカ「アクティブディファレンシャルコントロール」を採用するなど、単に動力性能が優れるというだけには留まらない、スポーツモデルとしての意気込みの高さを見せている。