「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、ヒュンダイ i20だ。

ヒュンダイ i20(2011年:日本未導入)

日本では乗用車部門から撤退してしまった(編集部註:2011年当時)ヒュンダイだが、2009年は世界第5位の生産台数を誇っている。そんなヒュンダイのBセグメント コンパクトハッチバックが、今回紹介する「i20」だ。

画像: オーストラリア仕様はインドで生産されている。デザインや開発はドイツで行われ、スタイリングはヨーロッパ人好みになった。

オーストラリア仕様はインドで生産されている。デザインや開発はドイツで行われ、スタイリングはヨーロッパ人好みになった。

韓国では「クリック」、その他の国では「ゲッツ」という名称だったが、日本では「TB」という車名で導入されていたモデルの後継にあたり、ヨーロッパでは若者を中心に人気を呼んでいる。日本と同じ右ハンドルで左側通行のオーストラリアでは、このi20をはじめヒュンダイやキアの韓国車が導入されているので、試乗してみた。

そのクオリティは、先代のクリックから格段に進化した。オーストラリアでもヨーロッパでも、ライバルはトヨタ ヤリス(日本名ヴィッツ)、ホンダ フィット、マツダ デミオといった日本製コンパクトカーになるだろうが、これらにとって非常に気になる存在だろう。

サイズはクリックより少し大きくなった。ESPとABS、それにデュアルエアバッグを標準装備し、ルックスや品質のレベルが上がっている。i20によって、ヒュンダイはもっと若い客層にアピールしようとしている。今までの「安い」から「コストパフォーマンスがクラストップ」と、販売姿勢も変えている。

ドイツでデザイン&開発された後、インドで組み立てられるi20のメインマーケットは欧州だ。したがって、エクステリアはヨーロッパ人が好むような滑らかで上品なスタイリングになった。このクラスでは、最近の日本車は大きなグリルやブリスターフェンダーのルックスが主流になっているが、i20はプロポーションが整っているし、アイデンティティがはっきりしている。

画像: エアコンやオーディオなど基本装備は充実している。写真は5速MTだが、今回試乗したのは4速AT。

エアコンやオーディオなど基本装備は充実している。写真は5速MTだが、今回試乗したのは4速AT。

オーストラリア仕様は、サスペンションやステアリングが専用の設定だ。だが、何よりも注目したいのは、新たに搭載されたガンマ シリーズというエンジンだ。試乗車は1.6Lの直4 DOHCで、最高出力は126psを発生。2500rpmくらいの比較的低い回転域からトルクがしっかり立ち上がってくれる。

トランスミッションは4速ATと5速MTが設定されており、今回試乗した4速ATはもはや新しさは感じられないが、ギア比はエンジンのトルクカーブとのマッチングから良い設定で、違和感なく走ることができた。だが1.4Lでは少しパワー不足かもしれない。

0→100km/h加速は、10秒を切るくらい。それでも、街乗りでもハイウエイ走行でも、とくにパワーが足りないという印象はなかった。むしろ、この仕様なら日本車を凌いでいるのではと思えたほどだ。メーカー発表のEU総合燃費は16.4km/L、CO2排出量は143g/kmだが、これらの数値は最新のヨーロッパ製小型車と比べて、良くも悪くもないという感じだ。

ハンドリングはシャープだし、ほとんどの道路のうねりを上手に吸収して、乗り心地も良かった。黒とアルミの2トーン内装は仕上がりも良く、ライバルとなる日本車にはデザインでは勝っている印象だ。ここまでデザインと質感が上がれば、あとはコストパフォーマンスで決まる。オーストラリアでも、i20は日本車より3000オーストラリアドル(約24万円)くらい安いのだ。今後、オーストラリアでもヨーロッパでも、i20は日本車を脅かす存在になることは間違いないだろう。

画像: 4速ATのギア比とエンジンのトルク特性はマッチしており、走りに違和感はなかった。

4速ATのギア比とエンジンのトルク特性はマッチしており、走りに違和感はなかった。

■ヒュンダイ i20 主要諸元

●全長×全幅×全高:3585×1595×1540mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1125kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1591cc
●最高出力:93kW<126ps>/6300rpm
●最大トルク:157Nm<16.0kgm>/4200rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:横置きFF
●EU総合燃費:16.4km/L

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