最高出力659ps、最大トルク900Nmのモンスターパワーを手玉に取る
舞台はイタリアのシチリア島。放棄され長い時間を経た航空基地(NATOの空軍基地だった)の荒廃した風景の中を、美しい2ドアグランツーリスモが圧倒的な重厚感をまといながら豪快に駆け抜けていく。
主役はベントレー コンチネンタルGTスピード。全長4880×全幅1965(標準モデルの数値/コンチネンタルGTスピードの全幅は未公開)×全高1405mm、ホイールベースは2850mmと、振り回すにはそれなりに気合を入れたくなるサイズではある。それ以上に、659psに達する最高出力とわずか1500rpmから発生される900Nmもの最大トルクと聞けばもはや、度胸と根性だけでどうなるものでもない。
その圧倒的ポテンシャルを手玉に取りつつ、華麗なドリフトランを可能にしているのは、卓越したシャシと最先端のトラクション制御技術のたまものだ。映像を見てもただやみくもにテールをスライドさせているわけではなく、素早く向きを変えいち早く加速体制に入るための「ドリフト」を演出している。一瞬だけれど映された無駄のないハンドル操作には、思わず唸らされた。
先進の電子制御式全輪操舵は、後輪のステア角度を絶妙にコントロールし、コーナリング時には軽快感を、高速走行時には安定感をそれぞれ高めてくれる。ベントレー初のeLSD(電子制御式リミテッドスリップデファレンシャル)は、TCSやアクティブシャシシステムとの連携で悪路でのトラクションを最大限維持。ターンインでのレスポンスを向上させるなど、ドライバーとクルマの一体感を高める効果も発揮する。
さらに、ムービーの中で見せる華麗に舞うような挙動を可能にしているのは、新世代のESC(エレクトロニックスタビリティコントロール)なのだろう。ドライバーは、おそらくはダイナミックモードにセット、スロットル操作でコーナリングの挙動を自由自在に操っているのだと思う。
1920年代、ブランドとして誕生してほどなくベントレーの高性能ぶりを世に知らしめた「ベントレーボーイズ」たちが現代に蘇ったなら、「僕にも走らせろ!」と騒ぎそう。ちなみに冒頭に登場するRタイプ コンチネンタル(1952年式)がめちゃくちゃカッコいいことも、最後に付け加えておこう。(文:Webモーターマガジン編集部 神原 久/写真:ベントレーモーターズ)