モバイルパワーパックで拡がる移動と暮らし
「技術で人々の生活を豊かにする」ことをもの作りの原点とするホンダは、モビリティと暮らしにクリーンエネルギーの利用を拡大することが社会への重要な責務であると考え、2017年に着脱式可搬バッテリー「モバイルパワーパック」を開発。再生可能エネルギー由来の電力を持ち運び可能なバッテリーに小分けし、移動と暮らしの中でいつでもどこでも便利に使える柔軟性のある社会の実現しようと提案した。
「モバイルパワーパック」の発想は、再生可能エネルギーをいかに活用するかということにあった。再生可能エネルギーを電源として活用する際に問題となるのが、天候や気候、昼夜など自然条件に合わせて発電量が変動するため「電力需要に発電量を合わせることができない」ということ。電力需要に対して発電量が足りなければ停電の可能性があり、逆に発電量が多すぎると送電網に過大な負荷がかかるのを防ぐため送電が遮断されてしまい、せっかく発電した電力が捨てられてしまうこともある。
こうした問題を解決し再生可能エネルギーの活用を拡大するには、電力の需要と供給のバランスを取るためのバッファ機能、つまりモバイルパワーパックなどを活用した、電力を一時的に溜める調整力を設けることが重要と考えたのだ。
モバイルパワーパックを活用すると、例えば、昼間に太陽光発電などの発電量が多くなりすぎた時にはモバイルパワーパックがバッファとなって余剰電力を蓄電し、これを夕方など発電量が不足する時間帯に利用することでピークシフト(電力需要が最大になる時間をずらすこと)。電力系統の充電負荷を下げることができるため、自然条件に左右される再生可能エネルギーを使いやすくなる。
モバイルパワーパックの実用化はすでに2018年にホンダの電動二輪車に搭載することから始まっているが(現時点では法人向け)、その後も、インドやインドネシアをはじめとした地域で実証実験を繰り返しながら、モバイルパワーパックを活用したカーボンニュートラルな社会の実現を模索してきた。
今回の発表では、新型「モバイルパワーパック e:」の詳細を明らかにするともに、モバイルパワーパックを利用して2輪・4輪製品の電動化や電動製品の幅を広げ、インフラと連携したスマートな電力オペレーションを行うことで再生可能エネルギーを効率よく活用しようとあらためて提案しているのがポイントだ。
モバイルパワーパックは充電して使うのではなく、再生可能エネルギーによって充電されたものと交換しながら使うことを想定しており、複数のモバイルパワーパックを充電できるバッテリー交換ステーションの開発をしている。
将来的には、このバッテリー交換ステーションを電力系統につなぎ、電力不足時にはモバイルパワーパックに溜めた電力を電力系統に供給するといったことも検討されており、ホンダではすでにバッテリー交換ステーション「モバイルパワーパックエクスチェンジャー e:(Honda Mobile Power Pack Exchanger e:)」の準備も進めている。
なお、新型「モバイルパワーパック e:」は、従来のモバイルパワーパックと大きさは同じだが大容量で、耐劣化性、耐振動性、耐衝撃性を高めてさらに進化したのが特徴。もちろん従来型との互換性を持たせているので、従来のモバイルパワーパック対応機種でも使用できる。また、10月28日には新型「モバイルパワーパック e:」を使った法人向けリース販売のビジネス用電動三輪スクーター「ジャイロキャノピー e:(GYRO CANOPY e:)」を発表、10月29日にはインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けバッテリーシェアリング事業を開始(2022年前半)することを明らかにしている。
ホンダモバイルパワーパック e:(Honda Mobile Power Pack e:)主要諸元
サイズ:約298×177.3×156.3mm
バッテリータイプ:リチウムイオンバッテリー
定格電圧:約50.26V定格容量:26.1Ah/1314Wh
重量:10.3kg
充電時間:約5時間
※モバイルパワーパックe:は、現時点ではホンダe:ビジネスバイクシリーズを保有する法人向けのリース販売。