音声認識機能搭載の「iコネクトアドバンスド」
3月にプジョーはフランスカンヌで、コロナ禍後初となる国際試乗会を開催した。試乗モデルは、3月にオンラインで発表された新型プジョー308と、そのステーションワゴンである308SW。日本市場には2022年第1四半期以降に、ハッチバックの308から導入される予定である。
「308」としては3世代目となる新型は、従来モデルが採用していた「EMP2(エフィシエントモジュラープラットフォーム2)」の進化版の「V3(バージョン3)」を採用。コンポーネントの50%が新設計となっている。
ルックスも新鮮だ。ライオンの牙や爪を想起させる最新のプジョーデザインは、明らかに次のレベルに到達。彫りの深い造形は細部までとても緻密に作り込まれ、全幅が1852mmとワイドなボディや、クールな印象の新エンブレムと相まって、非常にスポーティで洗練された印象だ。
インテリアもプジョー独自のiコックピットがさらに進化した。運転席に座った瞬間から、これまで以上にドライバー中心にデザインされたことが感じられる。相変わらずドライビングポジションは独特だが、既存モデルよりはるかに違和感は少なくなっていた。
ハイライトは、10インチのタッチディスプレイと、その下に頻繁に使う機能を割り当てられる「iトグル」と呼ばれるタッチパネルを備えた、最新世代のインフォテインメントシステム「iコネクトアドバンスド」。
「OK、プジョー」と声をかけると、自然な会話形式でさまざまな操作が行えるほか、ディスプレイもタッチ操作に対するレスポンスが良く、とても直感的に使える。これは日本仕様にも採用されるというから楽しみだ。
3種類のパワートレーンが日本でも選べるようになる
今回は、308、308SWとも、日本上陸予定のパワートレーンを試乗した。130psの1.2L 直3ガソリンターボを積むピュアテック130は、エンジンのバイブレーションが若干気になったものの、走り出してしまえば気にならず、とても軽快な走りを楽しめた。特段パワフルではないが、8速ATが1750rpmで最大トルクの230Nmを発生するエンジンの能力を巧みに引き出し、十分に実用に耐える走りである。
ブルーHDi130の最高出力はガソリン車と同じ130psだが、300Nmの最大トルクを1750rpmで発生する1.5L 直4ディーゼルターボに8速ATを組み合わせ、常用域で力強い加速が味わえ、高速道路でも余裕がある。従来型も1.5Lディーゼルは人気だが、新型もこのモデルが販売の中心となりそうだ。
ちなみに308SWは、ハッチバックの308よりホイールベースが長く、リア回りが若干重いこともあって、308よりやや落ち着いた乗り味である。
衝撃的だったのはPHEVのハイブリッド225eである。ピュアテック130もブルーHDi130も、十分に進化が感じられて完成度も高いのだが、PHEVは別次元の走りを披露したのだ。
1.6L 直4ターボに電気モーターを組み合わせ、システム合計で225psと360Nmを発揮するパワートレーンは、電気モーターを積極的に使う設定で、発進時からとにかく静か。アクセルペダルを踏み込めばエンジンが始動するが、振動やノイズはしっかり抑えられていて、極めて滑らかでパワフルな加速を見せる。
さらに車両後部に12.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するため、車両重量はかさむが、低重心で前後重量配分が良好なため、ハンドリングもとてもスポーティだ。またボディの剛性感がとても高く、非常にフラットで上質な乗り心地を実現している。
ニュー308/308SWのハイブリッド225eの完成度は、間違いなくCセグメントハッチバック/ワゴンで世界トップレベルだ。日本ではGTで500万円台後半あたりになると予想するがその価値は十二分にある1台だ。(文:竹花寿実/写真:山本佳吾)
プジョー 308SW ハイブリッド225e 主要諸元
●全長×全幅×全高:4636×1852×1444mm
●ホイールベース:2732mm
●車両重量:1687kg(EU準拠)
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:1598cc
●最高出力:132kW(180ps)/6000rpm
●最大トルク:250Nm/1750rpm
●モーター最高出力:81kW(110ps)/2500rpm
●モーター最大トルク:320Nm/500-2500rpm
●バッテリー種類/セル:リチウムイオン電池/72セル
●バッテリー容量:12.4kWh
●システム総合出力:165kW(225ps)
●システム総合トルク:360Nm
●トランスミッション:8速AT(e-EAT8)
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・40L
●タイヤサイズ:225/40R18