フィアットグループの勢いを象徴する、アバルトの復活
このところ、フィアットグループの勢いを感じずにはいられない。
2009年、世界的な経済不況の中、フィアットはクライスラーと提携した。この提携では、フィアットの持つ技術、プラットフォーム、パワートレーンをクライスラーに提供するという。さらにGMから、オペルブランドを買収しようとアクションも起こした。
こうした積極的な動きは、今に始まったわけではない。2005年のGMとの資本提携解消後は、ブランドイメージの再構築に着手。同時に、市場に投入したグランデプントがヨーロッパ市場で大成功したことで、見事に赤字経営から脱却。自ら復活を宣言するまでに至った。
そこから勢いはさらに増し、2007年には往年の500を蘇らせた。そして、かつてのスポーツブランドである「アバルト」も、同じく「復活」を宣言するなど、フィアットの展開は目覚ましいものとなっている。
そのアバルトブランド、日本には今年(編集部註:2009年)2月のアバルト グランデプントを皮切りに上陸を開始した。そして4月にはこのアバルト500がデビューとなった。そして直後の5月に、アルファロメオ ミトの販売も開始されたことを考えると、日本においても、フィアットグループの勢いの良さがよくわかるというものだ。
硬派なスポーツムードが漂うインテリア
さて、このアバルト500、これまでも何度か試乗レポートをお届けしたが、それらはサーキットでのものだった。今回、ようやく日本の公道で乗ることができたので、あらためてレポートしたい。
まずは、そのスタイリングをじっくりと見る。やはり強調された重心の低さとワイド感が印象的だ。ノーマル500の可愛らしさをあまり感じさせない。ターボを装着するためにエンジンルームを広げ、そのために伸びたフロントノーズといったわかりやすい変化はある。だが、コテコテのスポーツカーというものではなく、実にスッキリしていて好感がもてる。
取材車がオプションのレッドサイドストライプ、レッドドアミラーカバー、パールホワイトのボディカラー、17インチアルミホイール(通常は16インチ)を装着していたことを考えると、標準仕様では「あっさりしすぎ」なのでは、と思えるほどだ。
しかしインテリアは、赤いレザースポーツシートをはじめ、下部がフラットになったD形状の3本スポークステアリング、アルミ製シフトノブ、随所に使われた赤いステッチと、硬派なスポーツムード満点。ドライバーをその気にさせてくれる。
搭載する1.4Lターボエンジンは最高出力135ps。通常モード時最大トルク180Nm、スポーツモード時最大トルク206Nmを発揮し、5速MTと組み合わせられる。