余裕ありのフロントシートボディサイズが生む存在感
それにしても実際に対面をしてみると、早々にやって来た新型グランドチェロキーLの佇まいはさすがに堂々たる印象。「初代ワゴニアにヒントを得た」と称される長さが強調されたフラットなフロントフードや逆スラントしたグリルに加えて、ルーフが水平基調で長くいかにもキャビン空間の広大さを連想させる点などが、新型グランドチェロキーならではの「見せ場」と言えそうだ。
右ハンドル化されていながら、ドライビングポジションに違和感は皆無。惜しむらくは、大きく位置の高いドアミラー背後に生まれる死角が、とくに小さな交差点での右折時には気になることで、この点には細心の注意が必要だ。
サイズが大ぶりで、助手席側との距離が大きなフロントシートのつくりも、新型グランドチェロキーLならでは、という雰囲気づくりにひと役買っている印象だ。
一方、それとの相対論ということにもなるが、上級グレードの「サミットリザーブ」に装備される2列目のキャプテンシートはやや小ぶりでクッション厚も薄く、ベンチシートとなる「リミテッド」のの方がむしろリラックスして過ごせるようにも思えた。3列目シートは、着座位置とフロアとのヒール段差が小さいため、かつての体育座りに準じる着座姿勢となる。
日本には、まずこの2グレードが導入されるが200万円超の価格差がある。シートの違いに加えてリフレクター式とプロジェクター式というLEDヘッドライトの違い、オートエアコンの設定ゾーン数の差、シート調整機能の違いやパノラミックサンルーフ/エアサスペンションの有無など、相違点は多い。
乗り味はリミテッドが18インチ、サミットリザーブが21インチとなるタイヤ&ホイール径の違いを、後者のエアサスペンションがある程度相殺しながら、なお前者の方が幾分マイルドで、ハンドリング面でもわずかながらよりリニアで軽快という印象だった。
動力性能的には、3.6LのV6ユニットが思いのほか強力で、かつアクセルペダルを深めに踏み込むとスポーティなサウンドを聞かせてくれるなど、意外なほどに活発なテイストの持ち主であったことが印象的。「大きくて強そう」なSUVを望む向きには、何とも気になる存在がデビューしたのは間違いのない事柄だ。(文: 河村康彦/写真:伊藤嘉啓)
ジープ グランドチェロキーL リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:5200×1980×1815mm
●ホイールベース:3090mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:V6DOHC
●総排気量:3604cc
●最高出力:210kW(286ps)/6400rpm
●最大トルク:344Nm/4000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・87L
●WLTPモード燃費:7.7km/L
●タイヤサイズ:265/60R18
●車両価格(税込):788万円