EQSやEQEというBEVもそのモデルラインナップに加えているメルセデスAMG。ハイパフォーマンスであることに大きな存在価値を備える同ブランドで、これからの主役を担うのはプラグインハイブリッドとなる。そのトップバッターのハンドルを握った。(Motor Magazine 2022年7月号より)

F1用PU開発部隊の協力で生まれた冷却システムを採用

メルセデスAMGは、電動化の波の高まりの中でもネガティブになどなっていない。むしろ「我々のようなハイパフォーマンスカーブランドにとって、電動化はピンチではなくチャンスです」と言う。電気モーターとバッテリーが可能にするパワーとトルク、そしてレスポンスは、まさにブランドが求めていたものだというのである。

画像: フロントに4L V8ツインターボエンジンとベルトドリブンスタータージェネレーター、そしてリアアクスルにモーターを搭載する。

フロントに4L V8ツインターボエンジンとベルトドリブンスタータージェネレーター、そしてリアアクスルにモーターを搭載する。

すでにBEVもそのラインナップに加えているメルセデスAMGが、今後の主力と見据えているのがPHEV(プラグインハイブリッド)で、メルセデスAMG GT63S Eパフォーマンスは、その第一弾モデルとなる。

メルセデスAMGの電動化の捉え方は、そのパワートレーンの構成を見れば一目瞭然だ。エンジンはお馴染みの4L V8ツインターボで単体でも最高出力639ps、最大トルク900Nmを発生する。このユニットにはRSGと呼ばれるベルト式スタータージェネレーターが組み合わされ、出力はAMGスピードシフトMCT9速AT、4マティックプラスシステムを介して4輪に伝達される。

電気モーターは最高出力204ps、最大トルク320Nmで、2速ギアボックスとともにリアアクスルに搭載される。これらすべてを合わせたシステム最高出力は843ps、最大トルクは1010〜1470Nm。いわゆるエコカー的なイメージは微塵もないと言っていい。

しかも駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は6.1kWh、EV航続距離は12kmに過ぎない。開発陣の言い分は、バッテリー容量を増やせば車重が増えて、パフォーマンスが落ちてしまうから、というものである。

その代わりに力が入れられたのがバッテリーの冷却だ。電動化車両はバッテリーの熱ダレによる性能ダウンが激しく、同じ速さを何度も再現できないのが常。だが、英国ブリックスワースのF1用PU(パワーユニット)開発部隊の協力で採用された冷却システムにより、このクルマの電気モーターは95psを常に、そしてピークパワーの204psも最長10秒間、発生し続けることが可能になったという。

極めてパワフルな走りとコントロール性の高さ

要するに圧倒的なパフォーマンスこそ最優先というメルセデスAMGの哲学はPHEVでもまったく変わっておらず、むしろその力を得て、より強力にその方向を推し進めようとしているのだ。

画像: 出力密度の極めて高いリチウムイオンバッテリー搭載。バッテリーセルの直接冷却方式を新採用する。

出力密度の極めて高いリチウムイオンバッテリー搭載。バッテリーセルの直接冷却方式を新採用する。

試乗はまずは一般道で。2.3トンを超える車重の影響は皆無とは言わないが、しかし走りは極めてパワフルでボディ、シャシの剛性感も高く、気持ち良いドライブが楽しめる。内燃エンジン車との違いは、コンフォートあるいはエコモードでは必要なければ適宜エンジンを停止させること。回生ブレーキの強さは4段階に調整できて最強モードではほぼワンペダルでのドライブも可能だ。

凄まじいパワーとトルクを体感するにはサーキットに持ち込むほかない。アクセルペダルを全開にするとほんのひと呼吸置いたあとにフルパワーが炸裂する。だが、意外や暴れ馬を御しているような扱いにくさはなく、クルマを確実にコントロール下に置いておけることに感心させられた。

電気モーターはリアアクスルに搭載されていると書いたが、その出力は後輪だけではなく、プロペラシャフト、トランスファーを通じて前輪にも伝えられている。そのためいきなりパワーとトルクを炸裂させても容易に姿勢を乱すことはなく、余すことなく推進力として利用できる。しかも触れ込みどおり、ラップ数を重ねてもその勢いは衰えない。

まさに電動化の旨味をパフォーマンスにフル活用した1台に仕上がっていたというのが偽らざる実感である。メルセデスAMGはこのPHEVシステムをモジュラー化して、今後幅広く展開していく意向だという。国際試乗会でメルセデスAMGの首脳陣が話してくれたところによれば、次に登場するのは、4気筒エンジンとの組み合わせになるだろうとのことだ。(文:島下泰久/写真:メルセデス・ベンツ日本)

メルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス 主要諸元

●車両重量:2380kg(EU準拠)
●エンジン:V8 DOHCツインターボ+モーター(RSG)
●システム最高出力:620kW(843ps)
●システム最大トルク:1010-1470Nm
●総排気量:3982cc
●最高出力:470kW(639ps)/5500-6500rpm
●最大トルク:900Nm/2500-4500rpm
●モーター最高出力:150kW(204ps)
●モーター最大トルク:320Nm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●WLTPモード燃費:12.6km/L

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