308となってから3代目、9年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型308。新世代プジョーの第一弾となる2台の308を詳しく見ていこう。(Motor Magazine2022年7月号より)

ボディサイズは大型化。そのゆとりを居住性に振っている

メカニズム面では従来型の改良版が多く用いられている。プラットフォームは先代と同じEMP2だが、新型ではそのバージョン3に進化しており、使用されるパーツのおよそ50%が新設計された模様。

画像: リアシートは60対40分割可倒式で、ラゲッジスペースは412L。リアシートを倒せば最大で1323Lとなる。

リアシートは60対40分割可倒式で、ラゲッジスペースは412L。リアシートを倒せば最大で1323Lとなる。

このプラットフォームはさまざまなパワープラントに対応するもので、新型3088の場合、1.2L直列3気筒ガソリンターボエンジンと1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンを搭載したモデルがまず登場。追って、1.6L直列4気筒ガソリンターボエンジンにプラグインハイブリッドを組み合わせたモデルが導入される。ギアボックスは引き続きアイシンAWと共同開発した8速ATを採用する。

ボディはハッチバックとステーションワゴンの2タイプ。このうちハッチバックは旧型に比べて全長+145mm、全幅+45mm、全高+5mm、ホイールベース+60mmと全方位的にサイズを拡大。いっぽうのステーションワゴンはホイールベースこそ先代と同じだが、全長+55mm、全幅+45mm、全長+10mmとこちらも全般的に大型化しており、余裕ある室内スペースを実現している。

グレードはアリュールとGTのふたつで、アリュールはガソリンもしくはディーゼル、そしてGTはディーゼルもしくはハイブリッドから選択できる。価格は305万3000円(ガソリン/ハッチバック/アリュール)から530万6000円(ハイブリッド/ステーションワゴン/GT)まで。

このうち、今回はディーゼルモデルの308GT ブルーHDiとガソリンモデルの308アリュール(いずれもハッチバック)に試乗したので、その印象をお届けしよう。

素早いレスポンスのディーゼルエンジンとスポーティな足回り

最初に試乗したディーゼルモデルは、エンジン始動時のノイズが小さく抑えられているほか、低回転域で強くアクセルペダルを踏み込んでもガラガラという燃焼音はほとんど耳に届かないため、静粛性は良好。エンジン回転数が高まれば、それなりにエキゾーストノートは聞こえてくるものの、音質はスポーティなガソリンエンジンに近く、ディーゼルとは思えないほど官能的だ。

画像: 308 GT ブルーHDi。最高出力130ps、最大トルク300Nmを発生する1.5L直4DOHCディーゼルターボエンジンを搭載。

308 GT ブルーHDi。最高出力130ps、最大トルク300Nmを発生する1.5L直4DOHCディーゼルターボエンジンを搭載。

このディーゼルエンジンの魅力は振動やノイズレベルが良好なことだけに留まらない。ペダル操作に対するレスポンスが素早いうえ、ディーゼルとは思えない速さでエンジン回転数が上昇していくため、たとえばワインディングロードでも実に小気味のいい走りが楽しめるのである。

足まわりは小さなストローク域の動きを柔軟にすることで路面からのゴツゴツ感を吸収するいっぽう、そこから先はボディの動きをしっかりと抑え込むタイプで、意外にも(失礼!)スポーティ。フランス車特有のネコ足というよりも、ダンピングがしっかりと利いたドイツ車風サスペンションに快適性も付け加えたという印象だ。

そんな足まわりがもたらすハンドリングは、俊敏な中にもどっしりとした安定感が認められるもので、安心感は強い。そして前述のiコックピットがクルマの「手の内感」を見事に生み出していて、ストレスを感じさせないドライビングフィールを実現している。

インテリアの質感も驚くほど高い。ダッシュボード、ハンドル、シートのどれをとっても手触りは上質で、作り込みもていねい。そして近未来感あふれるデザインも見事なものだ。往年のフランス車ファンのなかにはもっとソフトなタッチを求める方もいるかもしれないが、そのいっぽうでアバンギャルドがフランスの重要な価値観だったことも事実。

また、旧PSAグループのなかで、プジョーは「高級感とハイテク感を持ち合わせたブランド」と位置づけられていることも、こうしたデザインが採用された一因といえる。

直列3気筒ユニットの弱点を感じさせないスムーズ感

ガソリンエンジンを積んだアリュールは、ディーゼルのGTよりもさらに静かで滑らかなエンジンフィールが楽しめる。「それは当然でしょう」と思われるかもしれないが、この1.2Lターボエンジンが3気筒であることを思い起こせば、その印象も驚きに変わるはず。実際、このエンジンは3気筒特有のざらついた感触を一切伝えず、スムーズで静かな印象を乗員に与える優れたパワーユニットだ。

画像: 308 アリュール。静かで滑らかなフィーリングの1.2L 直列3気筒ガソリンターボエンジンを搭載。

308 アリュール。静かで滑らかなフィーリングの1.2L 直列3気筒ガソリンターボエンジンを搭載。

ただし、マイルドハイブリッドを持たない小排気量エンジンゆえに低回転域のトルク感はとりたてて強力とはいえない。もっとも、「もうちょっと力があればなあ」と思うのは上り坂のワインディングロードを軽快に走ろうとするときくらいで、日常的な走り方であれば一般道から高速道路まで不満を覚えることはないはず。ちなみにWLTCモードで17.9km/Lを記録する省燃費性も、この3気筒エンジンの長所だ。

足まわりは、GTと違ってストロークのごく初期から弾むような感触があり、これがGT以上にスポーティで軽快な走りに寄与している。だからといって快適性が大きく損なわれているということは決してない。アリュールというグレード名から受ける印象とは多少異なるかもしれないが、完成度の高い足まわりの仕様だといえる。

質感の高い内外装やソリッド感の利いた足まわりはドイツ車にも通ずるものだが、GTのインテリアに見られる薄緑色のステッチなど、新型308にはフランスのエスプリが随所に息づいている。

その弱点の見当たらない完成度と戦略的な価格設定により、かつての306を彷彿とするヒット作になりそうな気配が、この308には濃厚に漂っていた。(文:大谷達也/写真:井上雅行、佐藤正巳)

Check:最新のプジョーエンブレム ─── 次世代への進歩を象徴

画像: 2021年、プジョーはブランドを象徴する新しいエンブレムを発表した。デザイン的には、伝統であるライオンをモチーフにしながら、従来の全身像から横顔に改めるとともに、スマホのアイコンを思わせる2D的な表現が採り入れられた。ちなみに、プジョーのエンブレムにライオンの横顔が採用されるのは、今回が初めてではない。過去、プジョーはロゴデザインを10回刷新してきたが、今回を含めて過去に4回、横顔を用いている。つまり、伝統を受け継ぎつつも、次世代に向けた再スタートを象徴しているのが、最新のプジョーエンブレムだといえる。

2021年、プジョーはブランドを象徴する新しいエンブレムを発表した。デザイン的には、伝統であるライオンをモチーフにしながら、従来の全身像から横顔に改めるとともに、スマホのアイコンを思わせる2D的な表現が採り入れられた。ちなみに、プジョーのエンブレムにライオンの横顔が採用されるのは、今回が初めてではない。過去、プジョーはロゴデザインを10回刷新してきたが、今回を含めて過去に4回、横顔を用いている。つまり、伝統を受け継ぎつつも、次世代に向けた再スタートを象徴しているのが、最新のプジョーエンブレムだといえる。

プジョー308モデルラインナップ

アリュール(1.2Lガソリンターボ):305万3000円
アリュール ブルーHDi(1.5Lディーゼルターボ):327万7000円
GTブルーHDi(1.5Lディーゼルターボ):396万9000円
GTハイブリッド(1.6Lガソリンターボ+モーター):490万6000円
SWアリュール(1.2Lガソリンターボ):325万3000円
SWアリュール ブルーHDi(1.5Lディーゼルターボ):347万7000円
SWGTブルーHDi(1.5Lディーゼルターボ):436万9000円
SW GTハイブリッド(1.6Lガソリンターボ+モーター):530万6000円

プジョー308アリュール主要諸元

●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm
●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1350kg
●エンジン:直3DOHCターボ
●総排気量:1199c
●最高出力:96kW(130ps)/5500rpm
●最大トルク:230Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量: プレミアム・52L
●WLTCモード燃費:17.9km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格(税込):305万3000円

プジョー308GT ブルーHDi主要諸元

●ホイールベース:2680mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1495cc
●最高出力:96kW(130ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量: 軽油・53L
●WLTCモード燃費:21.6km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):396万9000円

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