上質であること、満足できることなどといった「ラグジュアリー」の価値観を比較するのは、実は簡単ではない。とはいえ、多くの人々を納得させられることのできる表現があるということも、また事実だろう。SクラスとVクラスの上級グレードモデルを通じて、メルセデスベンツらしいラグジュアリーの捉え方を体感してみた。(Motor Magazine 2022年8月号より)

フォーカスは2列目シート。熟成の結晶と秀逸な実用性

続いて、V220dエクスクルーシブロング プラチナスイートに乗り換える。受注生産だというこのモデル、ずいぶん大げさなモデル名だが、実際に2列目シートを見れば、それも納得。スライドドアを開けた先には、柔らかなヘッドレストを備えた、ナッパレザー張りの大型キャプテンシートが2脚、鎮座しているのだ。

画像: V220d エクスクルーシブ ロング プラチナスイート。左右のフロントドア、電動デュアルスライドドア、電動開閉テールゲートを開く。2列目右席はオットマンを上げた状態。

V220d エクスクルーシブ ロング プラチナスイート。左右のフロントドア、電動デュアルスライドドア、電動開閉テールゲートを開く。2列目右席はオットマンを上げた状態。

とりあえずはドライバーズシートへ乗り込む。これも専用装備のレザーARTICOダッシュボード、アルミニウムインテリアトリムのおかげで、雰囲気は上々だ。一方で、エンジンの始動と停止は差し込んだキーを回すスタイルで、アップデートを重ねて今に至るとは言え、当初はビアノの名でデビューしたのが2003年のことだと改めて意識させられた。

発進させると、2L直列4気筒ディーゼルターボエンジンはそれなりに音も振動も発するが、それが実際のトルクの厚みと相まって、力強い印象を倍加させているのは面白いところと言える。 

ロングボディ、しかもAMGGラインということで全長は5155mmとかなりの大柄。しかしメルセデスらしくハンドルはよく切れるし、全方位に優れた視界が確保されているので、狭い道でバックを強いられたような時でも、実は想像するほど難儀することはない。

このあたりは、やはりとても実直。商用車ベースのモデルだということもあるが、メルセデス・ベンツの本質は究極の実用車なんだなと改めて実感させられる。

BEVではまだ到達できないブランドの本質的な価値

正直なところ、とくに街中での走りにはさほど面白みはない。細かな振動、騒音は気になるし、実際以上に大きなクルマを動かしているかのような感じもする。

画像: V220d エクスクルーシブ ロング プラチナスイート。細かな改良を積み重ねられているものの、クラシカルなディテールも随所に残る。

V220d エクスクルーシブ ロング プラチナスイート。細かな改良を積み重ねられているものの、クラシカルなディテールも随所に残る。

そんな印象がじわり変化してくるのが速度を上げていった時だ。低速トルクの豊かなディーゼルエンジンとハイギアードな9速ATの組み合わせは息の長い加速感を味わわせてくれて、これがなかなか気持ちいい。そして乗り心地である。低速域では路面のアンジュレーションに煽られて落ち着かないのに、速度が高まってくるとピターッと安定してくるのだ。

後席に座っていてもそうで、低速域では正直、アルファードの方がよほど快適と思ったりもするのだが、速度が上がってくると、さすがメルセデスという思いがこみ上げてくる。長距離で疲れないのは断然、Vクラスである。

EQSそしてEQBと、同様の世界観を志向したBEVもすでに世に出ている。またこれらの高い完成度もすでに確認済みである。

しかしながら電動ではなくコンパクトでもない、その意味では「昔ながらの」と評することができるのかもしれないこのSクラスとVクラスから今回、メルセデス・ベンツの「らしさ」、言うなればクルマづくりの本音のようなものを強く感じることができたのも、これまた事実なのだ。(文:島下泰久/写真:村西一海、井上雅行)

メルセデスベンツの最新動向:まもなくEQBが、そしてAMG C43も上陸

画像: EQB。

EQB。

着々と充実するEQシリーズとAMGシリーズによる両面展開。

これから、日本でもBEVのEQシリーズが続々と登場する予定である。いちばん早いデビューが見込まれているのはコンパクトクラスのEQBで、Bクラスの電気自動車版モデルといえる。さらにEクラスやSクラスのBEV版モデルに相当するEQEやEQSの導入もスケジュールには組まれている。また、新型Cクラスに待望のAMGモデルが加わることも確定している。2L直4電動ターボエンジン仕様のAMG C43 4マティックの登場は楽しみだ。

メルセデス・ベンツS580 4マティック ロング主要諸元

●全長×全幅×全高:5290×1930×1505mm*1
●ホイールベース:3215mm
●車両重量:2220kg*2
●エンジン:V8DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:3982cc
●最高出力:370kW(503ps)/5500rpm
●最大トルク:700Nm/2000-4500rpm
●モーター最高出力:15kW(20ps)
●モーター最大トルク:208Nm
●トランスミッション:9速AT 機
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・76L
●WLTCモード燃費:8.7km/L
●タイヤサイズ:前255/45R19、後285/40R19*3
●車両価格(税込):1978万円
*1:取材車はオプションのAMGライン装着車のため全長5320mm
*2:取材車はオプションのAMGラインとEアクティブボディコントロール装着のため車重2310kg
*3:取材車はオプションのAMGライン装着車のため、前255/40R20、後285/35R20

メルセデス・ベンツV220dエクスクルーシブロング プラチナスイート主要諸元

●全長×全幅×全高:5155×1930×1930mm
●ホイールベース:3200mm
●車両重量:2540kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1949cc
●最高出力:120kW(163ps)/3800-4400rpm
●最大トルク:380Nm/1600-2400rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量: 軽油・70L
●WLTCモード燃費:12.9km/L
●タイヤサイズ:245/45R19
●車両価格(税込):1218万円

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