突然の引退発表にはなにがあったのか
その発表は突然で、思いがけないものだった。
アストンマーティン・アラムコ・コグニザントF1チームから参戦する今季はたしかに優勝争いに加われていないが、チームの状態は上向きで、ヴェッテル自身もアゼルバイジャンGPでは6位に入賞し、チームメイトのランス・ストロールを上回るランキング14位につけている。まだ35歳で、チームからの信頼も厚く、チームは来季も契約を継続するとしていて、引退を感じさせるものはなかった。
そろそろ来季のシート獲得争いが始まろうとしている中、早い時期に自ら引退を発表することで若手ドライバーに活躍の場所を譲ろうということなのだろう。
ヴェッテルは、2007年第7戦アメリカGPでF1デビュー。負傷したクビサの代役でBMWザウバーからのスポット参戦だったが、いきなり8位に入賞、当時のF1史上最年少入賞記録(19歳349日)を達成して大きな注目を集めた。
この活躍が認められ、第11戦ハンガリーGPからトロロッソのレギュラードライバーに昇格。けして戦闘力の高くないマシンで、チーム初のQ3進出、最年少ラップリーダー(当時)、チーム最高の4位などの記録を次々と達成した。
2008年にはレッドブルに昇格。第14戦イタリアGPでは大雨の中、予選ポールを獲得したばかりか、決勝でもぶっちぎりの優勝。21歳72日で史上最年少ポールポジション、21歳73日で史上最年少優勝・表彰台・ポールトゥウイン(いずれも当時)という歴史的偉業を成し遂げた。
ヴェッテルの快進撃はその後も続き、2010年にワールドチャンピオンに輝くと、2013年まで4連覇、第1期レッドブル黄金時代を築き上げた。
その後、2015年からフェラーリに移籍したがここではチャンピオンを獲得することはできず(ランキング2位が2回)、2021年からはアストンマーティンに加わり、これまでの経験をもとに強いチーム作りに貢献していた。
これから次のドライバー探しということになるが、ヴェッテルの後継として早くも、ミック・シューマッハ、ダニエル・リカルドなどの名前があがっている。