やる気一発で走りが一変、アバルトマジックの本領発揮
だが走り出すと、やはり違うクルマであることがすぐにわかった。サスペンション形式はそのままに、専用設計を採用するコイルスプリングとダンパーが奢られたこともあって、一般道での乗り心地が明らかに硬くなっているという印象だ(ちなみに、車高も15mm低くなっている)。
しかし、ワインディングへと移動すると、負荷がかかる場面ではしっかりとストロークする。コーナリングでは、タイヤサイズがアバルト グランデプントの17インチではなく18インチを装着するため、接地感が高くなっており、ハンドルを切った分だけイメージどおりに曲がってくれるのだ。
自然と速度が上がってくるが、フロントのブレーキパッドが強化され、制動力が上がっており、しかも扱いやすいので安心してコーナーに入っていける。また、前後ともドリルドローターを装着するため、耐フェード性能が向上していることも、つけ加えておく。
低回転から太いトルクを発生させるので、コーナーからの立ち上がりも含めて、加速が鋭さを増している。クローム仕上げのデュアルスポーツエキゾーストパイプの奏でるエキゾーストノートも、コンパクトカーながら、ひとクラス上を行く感じででかっこいい。
こうした状況で、インパネの「SPORT BOOST」ボタンを押した。しかし、このモードを選択しても、もともとハイパフォーマンスなエッセエッセでは、最大トルクが太くなるということはない。スロットルレスポンスが上がり、パワーステアリングのアシスト特性が変わり操作感が多少重くなるだけだ。
それでも、ダイレクトな操作感を楽しむことができるため、スポーツ走行時には積極的に選びたくなる。こうした、走りそのものだけではなく、気分を盛り上げるという演出面にも、アバルトマジックの妙を感じるところだ。
エッセエッセのエクステリアがアバルト グランデプントと違うのは、車高とタイヤサイズの差、白く塗られたホイール、そしてリアにつけられた「esseesse」のエンブレムのみ。そのため、一瞬では見分けがつかないかもしれない。
だがその走りは、アバルトの名前から想像するイメージより大人しめだったアバルト グランデプントのものから、ずっとスポーティなものになっており、まったく異なっていた。
アバルトグランデプントでは物足りないと感じていた人には、刺激的なエッセエッセの走りをぜひ味わってみてほしい。(文:Motor Magazine編集部/写真:永元秀和)
アバルト グランデプント エッセエッセ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4060×1725×1465mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1240kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:132kW(180ps)/5750rpm
●最大トルク:270Nm/2750rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:13.5km/L
●車両価格:335万円 (2009年当時)