OBD点検は理想のユーザーベネフィットをもたらす
2021年10月、いわゆる「OBD診断」が(とりあえず)国土交通省によって義務化されてから、およそ1年が経った。そして2024年10月からはいよいよ、「OBD車検」の本格稼働が始まる(輸入車は2025年10月以降)。
「OBD」とは「On BoardDiagnostics(車載式故障診断装置」を略した呼び名。システムの詳細を説明するとややこしいことになる。要約すれば、クルマのさまざまなシステムのコンディションを監視し、不具合があるとそれを記録するとともに、警告灯などでドライバーに教えてくれる自己診断装置のことを指す。
整備や点検の時には、対応した診断用ツールを接続することで、記録データを読み取り、トラブルの詳細を確認することができる。さらに修理、調整を行った後で再度チェックすれば、不具合が解消されたことが確認できるわけだ。
このOBDが与えてくれる情報はとくに、ADASの普及が進み、一定レベルでの自動運転で走るクルマが増え始めた今、自動車整備の現場では不可欠となっている。ただしその情報も、正確に収集された上で、正しく利用されなければもちろん意味がない。
まずは調えられた作業環境と、正しい知識や豊富な経験を持つスタッフによる作業は必然。その時、不具合を起こした箇所とそれを解消するために必要な修理・調整の内容を教えてもらえるとなおいい。加えて交換部品、作業手数料などの見積もりまで提示されれば、安心感も増すというものだ。
それはある意味、自動車整備における理想的なユーザーベネフィットと言っていい。そしてすでに、そうしたOBD点検が生むベネフィットを積極的に提供し続けているプロショップがある。今回はそのひとつ、(有)山田自動車( http://yama-mobile.com/ )の山田勝也社長に、お話しを伺うことができた。
わかりやすく、隠すことなく伝えることで生まれる信頼
山田自動車は、先進運転支援機能の適切な整備を得意とする日本全国のボッシュカーサービス(BCS)認定店の中でも、いち早くOBDによる点検・整備に力を入れてきた。ADASエーミングについてのエキスパートの資格も有している。いわば「先達的」な事業者といったところだが、具体的にはユーザーに対して、どのようなメリットを提供してくれるのだろう。
「OBDを使った車検や点検を始めて1年くらいですけれど、とても便利なツールだと思います。お客様の満足度は高いですね」(山田社長)
満足度が高い理由のひとつはどうやら、「作業プロセスの徹底した透明性」にありそうだ。
山田自動車の場合、OBDを介してシステム全体を点検した結果を、いったんプリントアウトしてオーナーに説明する。もともとOBDに記録されているのはコード化された情報なのだけれど、スキャンツール(山田社長は、ボッシュ製KTS系をお勧め)でそれが読めるようになる。異常がある箇所を説明し、それに対応した修理・調整の内容もわかりやすく解説できる。
その上で、見積もりが提示され、納得してもらえれば作業へ。作業後はもちろん、改めてOBDをチェックして不具合が解消されていることを確かめてもらう。その上で、作業内容詳細をまとめた書類まで提出するなど、エビデンスに関する配慮も忘れてはいない。
そうした終始、丁寧な対応は、作業者にとって手間暇が増えることは確かだ。しかし、結果的に高額な費用が発生してしまったとしても、「ここまでやってもらえるなら」と納得してくれるユーザーは多いそう。「嘘偽りなく伝える」ことの大切さを、山田社長は強調していた。