決められたことだけではなく、本当に必要なサービスを提供
興味深いのは、単に故障個所を特定し修理するだけではなく、たとえばADASエーミングなどを実施する時に、その精度をより高めるためのメニューを提案してくれる場合があることだろう。とくにホイールアライメントを適正に調整することが、重要らしい。
純正状態でも実はまっすぐ走っていない=アライメントが適正でないクルマが、特に輸入ブランド系で散見されるそうだ。これはけっしてディーラーが手を抜いているわけではなく、アライメントの取り方によって異なるケースがあるという。
正確には直進が甘い状態のままで、カメラやレーダーの調整を行った場合、本来あるべき基準点からズレてしまう可能性は否定できない。それが時には、想定外の誤作動などにもつながりうる。
欧米ではテスラなどで、「ファントム ブレーキ」(自動ブレーキの誤作動)による事故報道されている例もある。もしかするとその原因の一端に、アライメント調整の不備があるのかもしれない。
また、山田社長自身、愛車のBMWをアライメント調整したところ、LKA(レーンキーピングアシスト)などADAS系のレスポンスがスムーズになった、とのこと。あくまで「経験とフィーリング」に基づくものだというが、フォーミュラレースなどでシビアなマシン調整についても豊富なノウハウを持つプロの感性だけに、十分な説得力がある。
愛車を預けるだけではなく「命を預けている」のだ
ある意味、確かな技術を持ったプロショップに依頼する醍醐味は、そうした「プラスαの安心感」にもあるかもしれない、と思える。
決められたことを決められたようにこなしてくれるディーラーはもちろん、信頼することができる。だがさまざまなブランド、車種を扱ってくる中での「気づき」は、プロショップだからこそ蓄積されるものだろう。経験値の厚みが違ってくることは、否めない。
山田社長の場合はさらに、「お金を払って機材を揃え、作業環境を整え、講習に出てノウハウを学んで取得した」BCS認定取得者としての真剣度が違う。認定後のトレーニングやサポートはもちろん、BCS同士の横つながりから生まれるネットワークは、これからの日本の自動車整備業界をリードしていくものだという自負がある。
「だって、人の命を預かっている仕事ですから」と山田社長。さらっとしたコメントだけど、そこには真髄があった。一方で、そうした真髄が業界全体に浸透しているかどうかは、実ははなはだ心もとないようだが・・・。
Webモーターマガジンが独自に追いかける特集【自動車整備に異変あり】、次回はOBDの活用やADASエーミングなど「人の命」に関わる整備の、日本における現状と課題の深層を覗いてみたいと思う。(画像提供:ボッシュ株式会社、有限会社 山田自動車)