まずは従来品「iG60」からの「スペック的進化」をおさらいしてみよう
ウルトラセブンと深田恭子のTV CMでおなじみの最新スタッドレス、横浜ゴム「iceGUARD7(アイスガードセブン)iG70」は、さまざまな意味での「アイスガード史上最大&最強」を謳っている。実際に乗ってみる前に、注目すべきポイントは以下の5つだろう。
■アイスガード史上最大&最強のポイント
・史上最大の接地面積
・史上最強のブロック剛性
・史上最大のエッジ量
・史上最多?の吸水力
・史上最長?のしなやかさ
吸水力としなやかさについては、「史上なんたら」がリリースで謳われていないため、いちおう「?」をつけた。だがそれぞれに従来型の「アイスガードシックスiG60」を凌ぐ、もしくは同等のデータが公表されているので、史上もっとも優れていることは確かだろう。
各「史上かんたら」を実現しているのは、タイヤの進化に当たっては定番といえるトレッドパターンとトレッド剛性、分子レベルでのゴム特性、さらにスタッドレスの場合はサイプ形状などの改良だ。
具体的には幅広のリブや縦長のベルトブロックが設置面積を最大化。ブロックが倒れ込んでしまうコーナリング時には、タイヤアウト側の大型ブロックが倒れ込みを抑制、路面への密着をキープしてくれる。
雪に効くエッジ量を増大させているのは、傾斜角度が異なる横溝(マルチダイアゴナルグルーブ)とジグザグの縦溝(トリプルライトニンググルーブ)の組み合わせ。給水スーパーゲル、ホワイトポリマーⅡ、マイクロエッジスティックといった新技術を盛り込んだ「ウルトラ吸水ゴム」が、吸水率を従来の「プレミアム吸水ゴム」から7%向上させている。
結果、iG70は以下のテストでそれぞれにiG60を凌ぐ実力を発揮している。それこそが、「安心感の差」と言っていいだろう。数値にすれば微妙なものも中にはあるけれど、念頭に置いて運転していると、確かにその進化を体感することができたように思う。
■iG70の進化(試験車両:トヨタ プリウスFF、タイヤサイズ:195/65R15)
・雪上制動を3%向上
・雪上発進を3%向上
・雪上旋回は同等以上
・氷上制動を14%向上
・氷上加速性能を15%向上
・氷上旋回を7%向上
エッジの増大と合わせてトレッド剛性も向上。しっかり感が違う
試乗会が開催されたのは、2022年初頭。寒さも積雪もしっかり「北海道らしい」状況で、試すことができた。まず初めにテストコーにて。ここではiG60との比較でミニバンに加え、4WDだけでなくFRスポーツモデルまで使って、圧雪路でのスラローム、屋内凍結路面での制動テストなどの豊富なメニューをこなす
テストコースでの印象は確かに、数値の変化に見合う「進化」を感じさせてくれるものだった。とくにわかりやすかったのは、GRヤリス(試験車両;パフォーマンスRZ 4WD、装着タイヤ:225/40R18)での雪上スラローム比較だ。とくに気負うわけでもなく普通にアクセルをオンオフしながらハンドルを素早く切り返していくと、iG70ではiG60よりペースが早くなっているのがわかる。
単純にグリップが高いというより、ハンドルからしっかりとした接地感が伝わってくるからこそ、の「ハイペース」なのだと思う。雪道で有効なエッジ量を増やすためにiG70は従来よりブロック剛性を高めているのだが、その腰の強さが安心感の差につながっている。
もちろん過信は禁物だ。速度域が高まればリカバリーにも精密さが要求される。振り回し気味に走らせて「わかりやすく楽しい」のは、実はペースを上げにくいiG60のほうだったりする。
ブロック剛性の高さは曲がる時だけでなく、まっすぐな時にもメリットが感じられた。凍結路面でのフルブレーキングでは、iG70の方が躊躇なくブレーキペダルを踏み込むことができる。ABS制御の入り方もダイレクト感が比較的強い。iG60の方ももちろん制御はしっかり入るが、iG70ほどのガツガツと連続的な制御感は味わえないように思えた。