Dセグメントのベンチマークとして、セダン&ステーションワゴンのマーケットで圧倒的な完成度を誇り君臨し続けているBMWの3シリーズモデル。その特徴ある最新ガソリンエンジンモデル3台を改めて試乗した。M340i xDrive x 330e Mスポーツ xDrive x M3コンペティション M、3台それぞれの真骨頂とは?(Motor Magazine 2023年4月号より)

電動化の時代に向けてエンジンの価値を再提示

まずはPHEVの330e Mスポーツだ。その「電気自動車性能の高さ」で20年の追加以来、注目を集めている。改めてそのシステム概要とスペックを記すと、B型2L直4DOHCターボエンジンに電気モーター+リチウムイオンバッテリー(12.0kWh)を加えたパワートレーンで、システム最高出力292ps/同最大トルク420Nmである。満充電時のEV走行可能距離は56.4km(等価EVレンジ[WLTCモード])だが、実質的には40km前後だろう。

画像: 330e Mスポーツ。ボディカラーはM ブルックリングレーメタリック。

330e Mスポーツ。ボディカラーはM ブルックリングレーメタリック。

以前、330eの前期型を試した際の印象では「日常生活は案外、EV走行のままで行ける」だった。40kmも走ってくれれば、買い物や送り迎えなどの普段使いには十分。何より電欠しない(=先はガソリンで走る)安心感は大きい。

EVとして走行中のドライブフィールが、エンジンモデルとほぼ変わらないというのも魅力のひとつ。これは電動化時代を見据えた進化というべきだが、逆に言うと新しい乗り味を期待する向きには物足りないかもしれない。

ワインディングロードでは電気モーターの瞬発力を活かした走りを堪能した。前後重量バランスとバッテリー配置が絶妙で、重量増による嫌味をほぼ感じさせない。シャシとサスペンション、ステアリング系統が成熟し、ハンドルと前輪とが非常に滑らかにつながっているという印象を強く持つ。

3シリーズは、そもそもスポーティなサルーンとして鳴らす名だが、いっそう正確に動かせるようになった。その上でより懐の深い乗り心地を実現する。重いモデル(大バッテリーを積む電動車など)の開発に積極的に取り組んできた成果が、比較的軽いモデルにも好影響を与えているように思う。

操舵感でも味わう官能性BMWとして不変のあり方

エンジンも良かった。普通の4気筒ガソリンエンジングレードと直に比べたわけではないけれど、力がある分、アクセルペダルのコントロールで走らせやすい。

画像: M340i xDrive。ボディカラーはフローズンタンザナイトブルー。

M340i xDrive。ボディカラーはフローズンタンザナイトブルー。

これ以上、いったい何を望むというのか。望むとすればストレート6の官能性くらいか。いや、この4気筒だって今となっては耳に心地よく、十分に官能的なフィールを持っている。なるほど330eは紛れもなく上等な3シリーズだ。電動の時代が来ようとも、BMWらしいサルーンのあり方は変わらないという、それは強い意志の現れだと受け止められる。

高性能と実用性を高いレベルで実現した(予算が許すのであれば)もっとも好ましい3シリーズとし
てのM340i xDriveの立ち位置は、マイナーチェンジ後も変わらなかった。B型3L直6DOHCターボのカタログスペックは387ps/500Nmで、20年前ならM5クラスの値だ。

330eに比べるとフロントヘビーな印象は確かにある。そのうえ操舵感は強烈に「頑固」で、ハンドリングに強い意志を持たないドライバーを拒否するが如くだ。

そのリムの極太さと相まり、腕力が弱いか、手の小さいドライバーには正直、乗りづらいグレードかもしれない。けれども当然のことながら、それは一徹に重いわけではない。意志を持って操作し、フロントアクスルがそれに応えた瞬間から、動きにストレスはなくなり、自在感に満ちていく。

ハンドルの切り初めから途中での修正、そして直進へと戻る寸前まで、その操舵フィールは滑らかかつ上質で、前輪との一体感は(前の軽い)330eのさらに上を行く。さすがはMパフォーマンスモデルの足捌き、と言うほかない。

エンジンはB型だが、官能性がどんどん滅する方向性の昨今ではこのストレート6はもっとも官能的なフィールを備えるエンジンとして称賛されていい。サウンドは十分にクルマ好きの胸に響くし、何しろその美声を聴きながら500Nmもの最大トルクを右足ひとつで操るという感覚にはトルクの化物というべき電動車でも得難い機械フィールの妙があった。

クルマの運転が好きなら味わっておくべきモデル

なるほど「Mモデル要らず」の面目躍如だなぁ、と独りごちてM3コンペティションへと乗り換えてみたら、Mハイパフォーマンスを甘く見るなと、S型エンジンの咆哮ビンタをいきなり食らった。インパネのグラフィックにも気持ちが萌える。本国のFR仕様にMTを残したからだろう、こちらはシフトセレクターが屹立する。

画像: M3 コンペティション M xDrive。ボディカラーはサンパウロイエロー。

M3 コンペティション M xDrive。ボディカラーはサンパウロイエロー。

510ps/650NmのS型ユニットが大いに吠えた。走り出せば、そのキャラクターがM340iとほとんど裏腹であったことを改めて思い知る。もう笑ってしまうほどに操舵フィールはニンブル(鋭敏)。M340iから乗り換えた直後では、フロントサスペンションアームのひとつやふたつが外れているのか?と思ったほどだ。もちろん、その動きは精緻のひと言で、ノーズの寄せやすさひとつをとっても、スタンダードモデルとは一線を画すものだ。

実用域では比較的大人しく振るまうが、ひとたび高回転域まで回せばボンネットから飛び出さんばかりの力を発し、3シリーズをスーパースポーツのように蹴り飛ばす。サウンド、フィールともにずっと回し続けていたいと思うという意味では、これぞ官能性豊かなエンジンというべきだ。ぜひともクルマ運転好きが味わっておくべきモデルであることは間違いない。 

3グレードを立て続けに試乗して、改めて思う。今さらかもしれないが、BMWはエンジンを楽しむ乗り物づくりに、つまりはドライバー重視のクルマ造りに長けたブランドである、ということを。(文:西川 淳/写真:永元秀和)

BMW M340i xDrive主要諸元

●全長×全幅×全高:4725×1825×1440mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.6km/L
●タイヤサイズ:前225/40R19、後255/35R19
●車両価格(税込):1040万円

BMW M3コンペティション M xDrive主要諸元

●全長×全幅×全高:4805×1905×1435mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:1800kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:375kW(510ps)/6250rpm
●最大トルク:650Nm/2750-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:9.8km/L
●タイヤサイズ:前275/35R19、後285/30R20
●車両価格(税込):1382万円

BMW 330e Mスポーツ主要諸元

●全長×全幅×全高:4720×1825×1445mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1820kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1998cc
●最高出力:135kW(184ps)/5000rpm
●最大トルク:300Nm/1350-4000rpm
●モーター最高出力:80kW(109ps)/3140rpm
●モーター最大トルク:250Nm/3170rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:13.4km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格(税込):710万円

This article is a sponsored article by
''.