道幅が狭くアップダウン多めのニュータウンエリアに「軽」は最適
乗車人数に制限こそあるものの、価格的にはより身近な軽自動車をベースとする自動運転車両よる実証実験。しかも個人所有ではなく公共交通機関の手段を想定した試みは、日本の地方都市が抱える共通の悩みを解消しうるブレークスルーになりうると思う。
たとえば平地少な目な都市郊外エリアにおいて、丘陵地帯を切り拓いて開発された住宅地は得てして道幅が狭く、車両のすれ違いにも気を使うことが多い。加えて高齢化率が高い一方で絶対的な利用者数そのものは少なめな地域コミュニティ向けとしては、多人数乗車は必然とはならない。
つまり、ダイハツが得意とするコンパクトカーや軽自動車は「気軽に利用できる近距離移動手段」という地域と共生する交通システムの構築にぴったり、ということ。今回の実証実験に使われるタントは自動運転に対応させるため、ボディ各部にセンサー、カメラを装備するとともに、ルーフ部には巨大なライダーと思しき装置を搭載しているものの、「軽自動車」らしい身近感は失われていない。
自分で運転しなくても自由気ままに「移動」が楽しめる社会へ
今回の実証実験は、日本総研とあいおいニッセイ同和損保とともに3月6日(月)~24日(金)までの期間で実施される。総じては兵庫県神戸市が2018年から進めている「地域に活力を与える地域交通IoTモデル構築事業」の一環として、「自動運転サービス実装プログラム」の「リスク分析」という位置づけになるという。
少人数で利用でき、しかも安価かつ手軽に予約可能なオンデマンド配車が実現すれば、公共交通が不便なエリアでの、高齢者の自由な移動を効率よくサポートできるシステムが構築されるかもしれない。
ダイハツはすでに、介護施設が実施する送迎業務を地域一体型のモビリティサービスとして運用する「福祉介護・共同送迎サービス ゴイッショ」の展開をスタートさせているが、自動運転車の実用化はそちらの利活用拡大にもメリットとなりそうだ。
ほどよい規模感、おそらくは優れたコストパフォーマンスなど、事業化に向けたハードルが下がるのはいろんな意味で大歓迎。誰もがいつかは恩恵を受けるはずのモビリティサービスだけに、できることなら一日も早い社会実装を期待したいところである。