さらっと飛び出た重大発言に、メディアもびっくり。スーパー耐久シリーズ 2023 NAPAC 富士SUPER TEC24時間レースの決勝スタートを前に開かれた記者会見において、ACO(フランス西部自動車クラブ)のピエール・フィヨン会長がサプライズゲストとして登場。2026年開催予定のル・マン24時間レースで、水素を燃料とする内燃機関を搭載した車両の参戦が可能になることを明らかにした。

激闘前の和やかさが漂う記者会見で、想定外のビッグニュースが・・・

驚くほど多くのメディアが集った富士スピードウェイ クリスタルルーム8の会見場・・・予定通りにう始まった「スーパー耐久富士24時間レース 記者会見」は、なんとも和やかな雰囲気に包まれていた。

画像: 「記者会見」はVIPルームのひとつで開催された。登壇したのは写真左から、佐藤恒治トヨタ自動車社長、毛籠勝弘マツダ新社長、ACO(Automobile Club de l‘Ouest/フランス西部自動車クラブ)ピエール・フィヨン会長 そして桑山晴美スーパー耐久機構事務局(S.T.O.)事務局長。

「記者会見」はVIPルームのひとつで開催された。登壇したのは写真左から、佐藤恒治トヨタ自動車社長、毛籠勝弘マツダ新社長、ACO(Automobile Club de l‘Ouest/フランス西部自動車クラブ)ピエール・フィヨン会長
そして桑山晴美スーパー耐久機構事務局(S.T.O.)事務局長。

佐藤恒治トヨタ自動車社長に加え、マツダの毛籠勝弘新社長、スーパー耐久機構事務局(S.T.O.)の桑山晴美事務局長が笑顔でならび、さらにACO(Automobile Club de l‘Ouest/フランス西部自動車クラブ)会長であるピエール・フィヨン氏がサプライズゲストとして登壇している。

同じ「24時間」つながりということで、100周年を迎えるル・マン24時間レースに対するエールとして開催された感のある記者会見だったが、その雰囲気をガラッと一変させたのは、フィヨン会長のさりげないけれどとっても重要な発言だった。

それは、2026年からという具体的な期限を区切ったうえで、水素を燃料とする内燃機関搭載車(以下、水素エンジン車)を、ル・マン24時間レース参戦車として公認する、というもの。フィヨン氏の発言はとってもさらっとしたものだったが(翻訳がさらっとしていた、というべきか)、司会者が一瞬絶句してしまったほどにその内容は、実は重要な変化を示していた。

ル・マン24時間レースを主催するACO(フランス西部自動車クラブ)はかねてから、トップクラスのハイパーカーカテゴリーに水素燃料電池車を公認することを明らかにしていた。「MissionH24」と呼ばれるプロジェクトを立ち上げ、当初、2024年シーズンからのFCEV投入を目指してデモンストレーションを行っている。しかし、コロナ禍の影響などで2度にわたって実施時期が延期されている。

そんな中で日本では、2021年のスーパー耐久シリーズから水素エンジンを搭載したトヨタ カローラが実戦投入をスタート。ST-Qクラスというメーカーの開発車両が参加する「実験」的なカテゴリーが生まれ、他のカーボンニュートラル燃料とともに実戦での切磋琢磨が始まっている。

2030年にはすべてのハイパーカーが水素で走るかも

もともとル・マンは歴史的に技術の多様性には非常に寛容で、文字通り「走る実験室」として機能しているだけに、日本における水素エネルギー車導入にも注目していたのだろう。実際、フィヨン会長は2022年に富士スピードウェイで開催されたWEC(世界耐久選手権)の際に来日、水素エンジンを搭載したカローラクロスを試乗したこともある。

画像: フィヨン会長は、自由と多様性を重視する立場を強調。「水素を動力源とするカテゴリーとして当初はFCEVを選んだが、燃焼させて使う内燃機関もまたサスティナビリティを進めるうえでの重要な鍵になります」と語った。

フィヨン会長は、自由と多様性を重視する立場を強調。「水素を動力源とするカテゴリーとして当初はFCEVを選んだが、燃焼させて使う内燃機関もまたサスティナビリティを進めるうえでの重要な鍵になります」と語った。

いずれにせよST-Qクラスという挑戦的な取り組みが、今回の発表につながったことは間違いない。フィヨン会長はさらに、2030年までにはトップカテゴリー(現行のハイパーカークラス)に参戦する車両すべてが、水素燃料由来(FCEVもしくは水素エンジン車)のレーシングマシンに切り替わることを目指すと語り、メディアや関係者から拍手喝さいを受けていた。

この発言を受けて、トヨタ佐藤社長は「(この発言を)前向きに受け止めています。将来的には笑顔で、いい発表ができるように取り組みたい」と、回答。断言は避けつつも、積極的に考慮していく意向を表明している。

マツダ毛籠新社長も、「ロータリー水素の可能性を開いていただいたと考え、前向きに受け止めたいと思います」と笑顔でエール。今年のル・マンでは787Bをデモンストレーション走行させることにかけて「昔のクルマではなく将来のクルマを走らせたい」と、やや踏み込んで期待感を明らかにした。

S.T.O.の桑山事務局長は記者会見の冒頭、スーパー耐久シリーズのST-Qクラスについて、「試行錯誤の場を提供する」ことが重要な役割にあることを強調し「ル・マンの背中を追って、アジアから耐久レースを盛り上げながら未来のクルマ作りに少しでも役立ちたい」と語っていた。

今回のフィヨン氏の言葉によって、その理想が早くも現実になろうとしている。100周年を迎えた今年のル・マンはもちろん楽しみだけれど、2026年に向けた「進化」と「変化」の行方からも、目を離せそうにない。(写真:井上雅行)

This article is a sponsored article by
''.