A200dセダンに好印象。コンパクトで扱いやすい
まずは今回試乗することができた3モデルの価格から紹介したい。A180が498万円、A200dセダンが570万円、B200dが573万円である。A180はぎりぎり500万円を切るが、全体的に「高くなった」という印象を持ってしまう。
中央ディスプレのMAP上に複数のコンテンツを表示するゼロレイヤーを採用した最新のMBUXを装備する。
ちなみに、A＆Bクラスの従来モデルは、約2年前の2020年4月1日にも価格が改訂されたが、その時はA180が337万円、A200dセダンが420万円、B200dが426万円である。その差はそれぞれ161万円、150万円、147万円である。
「あぁ、メルセデスのAクラスもBクラスもずいぶん遠いところに行ってしまったなぁ」と嘆く人もいるかもしれないが、重要なのは価格ではない。要はそれに見合う価値があるかどうかの方が重要なのだと思う。
つまり価格に納得できる内容を持っているのであればいい、ということである。高い安いだけで言えば、安いクルマは他にもいくらでもあり、それのみが購入条件であれば、メルセデスを選ぶ必要はなく、選択肢は別になるからだ。
さて今回試乗した3モデルで一番好印象だったのはA200dである。周りを見渡しても、このセグメントのセダンはかなり少ない。日本の道路環境で使いやすいコンパクトなセダン、それもカッコいいカタチとなると他にはアウディA3セダンぐらいしかない。つまり輸入車であり、カッコ良くて、コンパクトであるという条件では、セダン好きには残念ながら選択肢は少ないのが現状である。
走りが熟成され魅力アップさらに装備レベルも向上した
さて実際にA200dセダンで走り出すと、これがとてもいい。これは積極的に選ぶ価値があると思えた。パワートレーンは2L直4ディーゼルターボエンジンに8速DCTを組み合わせたものだが、ネガとなるクルマの重さやディーゼルエンジン音が気にならない、軽快さや静粛性を持っていた。
Aクラス、Bクラスとも1.4L直４エンジン、2Lディーゼルエンジンをラインナップ。全車8速DCTを組み合わせる。
オプションのAMGラインパッケージ付ということもあり、18インチホイールを装着しているが、それも見事に履きこなしている。かなりフットワークは熟成されているように感じられた。
こうしたところ以外にも、改良された新型Aクラスのトピックは、目に見えるところも多い。たとえば進化した対話型インフォテインメントシステムMBUXの搭載だ。Sクラス同等の最新世代と謳われている。
具体的には、ゼロレイヤーが採用され、地図表示画面上に、行き先案内や目的地までの到着時間、混雑状況、ペアリングした電話の表示、ラジオやオーディ表示、次の行動の予測提案などが表示される。つまりよく使うコンテンツを下の階層まで行かなくても操作できるということだ。実際に使うとこれがとても便利だった。
またARナビゲーションも採用された。これは目的地を設定すると、ルート上の交差点などにさしかかった時に、カメラで映した実際の映像をディスプレイに表示するというもの。さらに進む方向が矢印で表示されるので、初めて通る道でも迷うことはないだろう。
そもそもMBUXの日本語の認識率はとても高く、これまでいろいろなクルマの音声操作システムをテストしたが、MBUXはトップクラスだ。これだけでもメルセデスを選ぶ価値があると言っていいだろう。
今回は、ガソリンモデルのA180にも試乗した。こちらの印象は軽快のひと言。価格という敷居は上がったが、初めてのメルセデスとしてはいい選択肢だと思う。
そしてもう一台、B200dにも乗ったが、このモデルの力強さやインテリアを含めた全体的なクオリティの高さはAクラスの印象と変わらない。ユーティリティ性能や積載能力をクルマ選びの上位にするなら、Ｂクラスは最有力候補としてショッピングリストの上位に置いておきたい。（文：Motor Magazine編集部 千葉知充／写真：井上雅行）
メルセデス・ベンツ A200d ＜B200d＞セダン主要諸元
●全長×全幅×全高：4560＜4425＞×1800＜1795＞×1445＜1565＞mm
●ホイールベース：2730mm
●車両重量：1500＜1550＞kg
●エンジン：直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量：1945cc
●最高出力：110kW（150ps）／3400－4400rpm
●最大トルク：320Nm／1400－3200rpm
●トランスミッション：8速DCT
●駆動方式：FF
●燃料・タンク容量：軽油・43L
●WLTCモード燃費：20.4km／L
●タイヤサイズ：205／60R16＜205／55R17＞
●車両価格（税込）：570万＜573万＞円
