SDGsに注目した、日本初のEVポンプ消防自動車
5年ぶりとなる「東京国際消防防災展2023」、モリタブースの展示テーマは「RX(Rescue Transformation:レスキュートランスフォーメーション)」だった。
モリタはこれまでも常に、多様化、複雑化する災害現場の消火・救助活動に対応するための革新的なソリューションを提案し続けてきた。今回は、世界的に広がりを見せるDX(デジタルフォーメーション)とSDGsへの取り組みに着目している。
最先端という意味でもっとも注目したいのが、フルバッテリーEVトラック(三菱ふそうトラック・バスのeキャンター)をベースとする、次世代消防ポンプ自動車のコンセプトモデル「MoEVius concept (メビウス コンセプト)」だろう。
この車両は自治体レベルでも重要度が増しつつあるSDGsを意識した、日本初のEVポンプ消防自動車だ。性能的には、一般的な住宅地を想定した消防活動を想定している。
具体的には、消防隊の拠点からおよそ10km圏内の火災現場まで走行し、消火に必要な時間(通常は約1時間とのこと。ポテンシャルとしては2時間程度まで確保しているようだ)の放水を実施、拠点まで戻るために必要十分な活動時間が確保されているという。
居住性を向上させた「クルーキャブ」で、新しい時代の消防車スタイルを提案
放水ポンプはA-2級を搭載。モリタが独自に開発した「MDM-ECU」を採用するePTOシステム(ポンプを駆動するパワーテイクオフ システム)を採用するとともに、リチウムイオンバッテリーからの限られた電力供給を最大限に活用をするEV専用ポンプe-Fire Pumpによって、高効率な運用が可能となった。さらにパッケージの工夫によって、900Lの水槽容量を確保している。
メビウス コンセプトは同時に、消防車の次世代スタイルの提案でもある。全長6760×全幅2200×全高2800mmのボディは、室内空間を拡大するとともに、居住性を大幅に向上させた「クルーキャブ」が特徴だ。後席スペースは約90度に展開が可能な大型ドアを採用し、素早くストレスフリーな乗降を可能にしている。
今後は実証実験などを経て性能を確認、改良を加えたうえで販売に至る。消防車両は通常、配備・運用までにそうとうな時間がかかることもあって、実際にその活躍を目にするまでには数年ほどかかるかもしれない。それでも人の命を守り、救うためのクルマたちだからこそ、環境への優しさが求められる時代は、確実に訪れる。その第一歩としてメビウス コンセプトの、これからの熟成をしっかり見守っていきたい。
東京国際消防防災展 2023は、2023年6月18日(日)まで開催中。