ランボルギーニ初のスーパーSUV「ウルス」がさらなる進化を続けている。最高出力666psを発生するウルスSとハイパフォーマンスモデルのウルス ペルフォルマンテ。今回はその2台の超高性能SUVの進化を掘り下げてみたい。(Motor Magazine2023年7月号より)

SUVで裾野を広げてブランド注目度をより高める

夏を思わせる陽光のもと、私は友人が迎えに来るのを待っていた。ところはスイス、チューリヒ湖畔。待ち合わせの時間を見計らったかのように爆音が聞こえてきた。目の前に現れたのは鮮やかな蛍光イエローを纏ったウルス ペルフォルマンテだった。

画像: ひとたびアクセルを踏み込めばV8ツインターボエンジンが雄叫びをあげる。(ウルス ペルフォルマンテ)

ひとたびアクセルを踏み込めばV8ツインターボエンジンが雄叫びをあげる。(ウルス ペルフォルマンテ)

颯爽と降り立ってきたのは世界的に有名なランボルギーニのコレクター氏。「ペルフォルマンテになって、ウルスはスポーツカーになったね。アシがとにかくしっかりしているので、運転が楽しいよ」。真新しいウルスを珍しげに眺めていたからだろう。挨拶もそこそこに彼はそう語りかけた。そして「普段乗りの<実用車>、とくに高速ツアラーとしても最高だ」と続けたのだった。

スポーツカーで名を馳せたブランドがそのイメージや希少性を損なうことなく量産体制に持ちこめる。作る側にとってのSUVの魅力はそこにある。SUVの量販によって得られた利益を元手に本業への投資を拡大し、さらに高性能なスポーツカーを誕生させることでブランド力を強化し、そのことがまたSUVの拡販にプラスの影響を及ぼす。

スポーツカーブランドにおけるこのビジネス戦略を最初に成功させたのはポルシェだ。カイエンによって確立されたビジネスモデルは今やフォルクスワーゲン・アウディグループのハイエンドブランドのみならず、他のメーカーにも大いに波及した。

もちろん、その背景にはいわゆるクロスオーバーSUVカテゴリーが先進国市場において「フツウのクルマ」の主流になった、という事実がある。日本の伝統的な高級車さえSUVを主軸に語り始めたという事態もまた、当然の成り行きだったというわけだ。

世紀のサンタガータ「スーパーカー」ルネッサンスを完全に定着

もっとも、SUVを企画さえすればすべてが上手くいくというほど自動車ビジネスは簡単ではない。スポーティイメージのある主だったブランドの中で、SUVを持たないのは今やマクラーレンだけと言ってもいいが、よくよく見渡してみるとすべてが成功しているわけではないこともわかる。

画像: アルカンターラ仕様のスポーツステアリングホイール。ステッチ入りで中央上部にはレッドマーカーを備える。(ウルス ペルフォルマンテ)

アルカンターラ仕様のスポーツステアリングホイール。ステッチ入りで中央上部にはレッドマーカーを備える。(ウルス ペルフォルマンテ)

そもそもSUVの位置付けは昔のセダンやエステート、ハッチバックの代わりだ。日本のマーケットにおいてもミニバンと並ぶファミリーカーの現実的なチョイスである。要するに普通のクルマだ。

それゆえ昔人気だったカテゴリー(セダンやワゴン)と自社ブランド内でカニバってしまうケース、たとえばジャガーやアルファロメオにおいて、セダンの販売台数をキープしつつSUV分を上乗せするという芸当は難しい。代わりにしかならない。とはいえ、SUVを出さなければ販売台数もジリ貧になってしまうのだが。

閑話休題。逆に言うとランボルギーニのようにマルチドアの実用モデルを持ってこなかったブランドは強かった。ポルシェもまさしくそうであったようにSUVの台数をそのまま純増とすることができたからだ。ブランドの裾野が広がれば広がるほどスーパーカーへの注目も高まっていく。

好印象が再びSUVへと回帰する。正のスパイラル、人気の好循環が生まれていた。マラネッロもすでにこの分野へと参入し大成功を収めつつある。既存モデルの人気や希少性に悪影響を及ぼす可能性もほとんどない。どころか裾野が広がれば広がるほど頂上は高くなる。企業のあらゆる基盤が高度に安定するというわけだ。

17年にウルスを発表してからというもののサンタガータの躍進には目を見張る。会社規模をすべての面、組織や生産、売上において倍増させた。アウディ傘下となって始まった世紀のサンタガータ「スーパーカー」ルネッサンスを完全に定着させるに至っている。

ウルスの人気も止まるところを知らずで、事実、前期型はマイナーチェンジの直前まで旺盛な需要に支えられてきたし、後ほど詳述する後期型に関してもあっという間に数年分のオーダーが入ってしまったらしい。

ウルスそのものはステファン・ヴィンケルマンCEOの第一次政権時代の計画で、ガヤルドに始まるサンタガータルネッサンスもまた彼の陣頭指揮によるものだった。これから始まる第二の成長期に関しても、ブランドの成功は再び彼の双肩にかかっていると言っていい。

ウルス2モデルで迎え撃つスーパーSUVウォーズ

すでにランボルギーニは今後十年について大方の計画を発表している。「コルタウリを目指せ!」計画だ。その骨子は2023年にアヴェンタドールに代わるフラッグシップモデルを、以降25年までにウラカンに代わる量産プラグインハイブリッドスーパーカーとウルスの同じくPHEVグレードを、さらに28年ごろまでにフルバッテリーEVの2+2GTカーを発表するというもので、すでにこの3月、アヴェンタドール後継のPHEV気筒モデル、レヴエルトが満を持して発表された。

画像: ウルスSは街乗りから長距離ドライブまでオールマイティにこなすラグジュアリーカー。安定感のある走りを魅せる。

ウルスSは街乗りから長距離ドライブまでオールマイティにこなすラグジュアリーカー。安定感のある走りを魅せる。

要するに電動化が第二成長期の基軸になるというわけだが、その前に今やビジネスの大黒柱というべきウルスも17年のデビュー以来初となるマイナーチェンジが施された。もちろん、ハイエンドブランドによるスーパーSUV戦争において、新参のライバルたちを迎え撃つためでもある。

マイナーチェンジ版ウルスには2つのグレードが用意された。スタンダード仕様の後継グレードとしてウルスSが誕生し、新たに高性能グレードとして追加されたのが冒頭のシーンにも登場したウルス ペルフォルマンテだ。

注目はやはり後者だ。ペルフォルマンテというサブネーム自体はランボルギーニファンにはすでにお馴染みだろう。V10スーパーカーのガヤルドやウラカンの高性能グレード名として過去に存在する名前である。

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