もしかすると今、もっとも魅力的な「運転席」を持つトヨタ車かも
【公道試乗①ショーファー編】では、新型アルファード/ヴェルファイア(以下、便宜的にアルヴェルに短縮)の快適性、走行性能を向上させる技術について検証してみたが、それらは同時にすべてが、ドライバビリティについても少なからず影響を与える改良・改善に他ならない。
細部にわたるボディ剛性向上、周波数感応型サスペンションといった振動制御の新技術などによって加減速時の姿勢変化を適正化させることは、ドライバーにとっても歓迎すべき変化につながる。それらすべてが、動的挙動を安定させるとともに、フィーリングを洗練させてくれるものだからだ。
そのあたりの進化ぶりに期待しながら運転席に座ってみると、およそミニバンとは思えない「包まれ感」に驚かされる。ただしそれはけっして不快な「タイト感」をともなうものではない。
ダイナミックかつエレガントに左右に広がりを見せるインストルメントパネルと、小ぶりなメーターナセル、大ぶりだがけっして目障りではない14インチタッチパネルディスプレイを中心とした重厚感あふれるセンターコンソールなど、部分ではそれなりに主張の強いデザインながら、すべてがバランスよく調和している印象だ。
座っているだけでも「収まり感」が心地よい。少々ミニバンらしからぬ「美点」になってしまいそうだが、クルマとの一体感がほどよく感じられる。
新型アルヴェルのコクピットを、トヨタはリリースの中で「クルーザーのような」と表現しているけれど、どちらかといえば雰囲気は完全にグランドツアラーだと思えた。視点の高さはまったく違うものの、目に入ってくるのはミニバンではなく、さながらスペシャリティ性の高いクーペのインターフェイスだ。
きわめて自然体のドライビングポジションも含めて、今もっともカッコよくて乗ってみたいと思わせるコクピットを持つトヨタ車ではないか、とすら思える。
12.3インチTFTカラーメーターとマルチインフォメーションディスプレイも、ちょっとクールな印象が好ましい。機能一辺倒ではなく、ドライブモードの切り替え時のアニメーション表示など、積極的に使ってみたくなる粋な演出も盛り込まれている。4つのテイスト、3つのレイアウトを組み合わせる表示のアレンジメントは、飽きの来ない愛着を感じさせる訴求ポイントのひとつになりそうだ。
総じて、非常に居心地のよいコクピットではあるのだけれど、新型アルヴェルがミニバンである、という前提でひとつ気になったことと言えば、センターコンソールの厚みだろうか。助手席に大きめの荷物を置いたときに、すっとストレスなくつかみあげることが少し難しい。
当然ながら、助手席の「大切な人」との距離はそれなりに空いてしまうのは残念。もしかすると今後、コンソール部が最小化された、距離感近めの仕様が追加されるのだろうか。