2010年春、アルファロメオ独自のデュアルクラッチトランスミッションが「アルファTCT」がミトに搭載されて登場した。Motor Magazine誌では、日本導入前に、イタリアで試乗テストを行っている。このトランスミッションでミトはどのように変わったのか。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年8月号より)

アイドリングストップ機構など省燃費にも貢献する「アルファTCT」

「アルファTCT」と名付けられたデュアルクラッチトランスミッションが、ミトに搭載されてついにデビューした。

画像: 高速道路を120km/h巡航時は6速で3000rpm。ミトのボディに135psエンジンとTCTはいい組み合わせ。「7速より6速の方がコンパクトにできるなど、トータルで効率がよい」とFPTのエンジニアは語っていた。

高速道路を120km/h巡航時は6速で3000rpm。ミトのボディに135psエンジンとTCTはいい組み合わせ。「7速より6速の方がコンパクトにできるなど、トータルで効率がよい」とFPTのエンジニアは語っていた。

これはFPT(フィアット・パワートレーン・テクノロジー社)が開発と生産を担当したもので、その構造を単純化して説明すると、2つのクラッチが前後に並んでおり、それが切り替わるときは瞬間的に両方のクラッチが半クラッチ状態になる。そのため駆動トルクの途切れがまったくと言ってよいほど感じられず滑らかで、しかも、ダイレクト感も持ち合わせているのだ。

このクラッチは乾式なので、湿式であれば必要になる4.8Lのオイルが不要で軽量にでき、さらにオイルの攪拌抵抗によるパワーロスもない。FPTの試算によれば、乾式の方が湿式よりも約6%燃費が向上するとのことだ。しかも、低コストであるというからいいことづくめだ。ただし、対応できるトルクには限度があるので、あくまでもコンパクトモデル対象ということになる。

また、アルファTCTの大きな特徴は、「スタート&ストップシステム」というアイドリングストップ機構を持っていることだ。このシステムにより最大10%の低燃費化を実現しているという。

組み合わされるエンジンは1.4Lマルチエアで、欧州では105ps、135ps、170psと3仕様が用意されている。今回、試乗できたのは135ps仕様で、日本へ秋に導入されるのもこれだ。5速MT車との比較データ<( )内が5速MT>があるので紹介しておくと、0→100km/h加速:8.2(8.4)秒、EU総合燃費:18.2(17.9)km/ℓ、CO2排出量:126(129)g、車重:1170(1135)kgとなっている。

駆動トルクの途切れがなく滑らか。ライバルと同等以上の好感触

さて、実際に乗ってみた印象だが、とにかく全般にスムーズだ。最近のDCTではボルボのパワーシフトがかなりスムーズでびっくりしたが、アルファTCTは同等かそれ以上といった感じだ。とても乾式とは思えない、繋ぎ目に粘りがあるのだ。

画像: 高速道路を120km/h巡航時は6速で3000rpm。ミトのボディに135psエンジンとTCTはいい組み合わせ。

高速道路を120km/h巡航時は6速で3000rpm。ミトのボディに135psエンジンとTCTはいい組み合わせ。

また、ハンドル一体のパドル(右がアップ、左がダウン)は扱いやすく、これを駆使してワインディングを走れば楽しいことこの上ない。小さなボディに手頃な135psというパワー、そしてアルファTCTという組み合わせは、ファンtoドライブという観点から見るとまったくもって申し分がない。

またスタート&ストップシステムは、どこにも違和感がない。クルマが停止して一瞬の間の後、エンジンが停止する。走り出すときは、ブレーキペダルから足を離すとすぐにエンジンが始動する。そして走り出すまで、どこにもギクシャクするようなところはない。微低速域でもスムーズなので、狭い駐車場での10cm単位でのクルマのコントロールなどもまったく問題なくできるだろう。

アルファTCTを得て、ミトはその魅力が倍加した。今後はジュリエッタにも搭載される予定だが、アルファTCTによってアルファロメオのコンパクトモデル全般の魅力が大いに高まるだろう。(文:Motor Magazine 編集部 荒川雅之)

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