デザイナーがイメージする「果実」をチームで共有体験
VRと同様にホールによって実現されているのは、デザイナーが脳内で醸成したイマジネーションの裏付けとなる実体験感覚の共有だった。たとえば「人」がクルマの内外で絡んできたときの外観的な存在感や、機能系の使用感などまである程度までリアルに再現しうるというから、興味深い。
ちなみにこのシステムを使って、実物大のモックアップを開発途上に作ることなく完成させた第1号は「Z」だった、とのこと。数種類のあデザイン案を実物大フルサイズ版のバーチャルモデルで並べ、時間的変遷や天候などの自然的な変動要素による「見え方」の違いを、検証、確認することが可能だったようだ。
プレゼンを目の当たりにしていて、ともすればデジタルモンスターちっくなデザインコンセプトが生まれてしまいそうな不安も覚えた。けれど、日産のVRへの取り組みはあくまで、デザイナーという人が持つ感性を補完し、無駄なく使いこなすためのGXであることを強調しておきたい。
アルバイサ氏とともにプレゼンを行った同社グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターの田井悟氏によれば、デザインの過程でどれほどデジタル化が進んだとしても、最後の最後にモックアップモデルで肌感を確かめる作業は残っている、という。
新しいプレゼンテーションホールでもその広さを生かして、実車をスクリーン前に置いて、バーチャルデザインとの比較をしながら煮詰めていく。つまりデジタルの道を着実に進めながら、フィジカルな魅力の追求もしっかり忘れない、ということになるだろうか。アナログ世代のクルマ好きにとっては正直、ホッとするコメントだった。
それとともに今後は、VRに続くデザインプロセスの革新としてきっとAI(artificial intelligence=人工知能)が来るのだろうなぁ、という予感があった。いや日産のことだ、さらに進んだAGI(Artificial General Intelligence=人工汎用知能)の実務への導入が検討されていたりしても、驚かない。
まずは今この時に、最先端の日産デザインがどんな存在感を放っているのか、JMS2023の日産ブースで公開されるEVのコンセプトモデルたちで、ぜひ確かめてみて欲しい。