ベルリンの市街地を駆け抜けるドイツ車たち
ベルリンが舞台ということで、登場するクルマはドイツ車がメイン。ターナーのクルマはメルセデス・ベンツのフラッグシップSUV、GLS。破壊される同僚のクルマはBMW 7シリーズ、ミュラーのクルマはマセラティ クワトロポルテ。パトカーはBMW 5シリーズやVW パサートなど。金融業界に居るという男たちの乗るクルマは1500万円超えだ(ターナーの新車も息子が10万ユーロと言っている)。庶民に手を出せる金額ではないが、金融業界の人間は高級車に乗れるハイクラスの人間ということ、そこには金に執着する人間の闇があることも示唆する脚本があるわけだ。
劇中では市街を警察車両とターナーのGLSがチェイスする場面もあり、車輛爆破のサスペンスとともにリアルなカーチェイス(昨今のド派手でCG多用のカーアクションとは違う)も観客を楽しませてくれる。あくまでカーチェイスは被害者であるターナーが子供たちを守ために強いられるチェイスなのだ。そこには特別な「見せる運転テクニック」はなく、ただひたすらに必死になって現状打破のため疾走するドライビングが展開する。そのために、よりリアルなカーチェイスが劇中では行われる。
本作はアクションのためのカー・アクションではなく、物語のシチュエーションを追っていく中で必要となるカー・アクションを見せてくれる。それゆえに無理矢理感は少なく、91分という、まるでリアルタイムで進行していく緊張感も味わうことができる、そんな1本だ。(文:永田よしのり)
「バッド・デイ・ドライブ」
●2023年12月1日(金)公開/91分
●監督:ニムロッド・アーントル
●出演:リーアム・ニーソン、アンジェラ・ブリックマン、マシュー・モディーンほか
●配給:キノフィルムズ
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