この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第41回目は、いすゞの代表的乗用車としてその存在感を示したフローリアンの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

始まりは117サルーン。16年の長寿を保つ

長年にわたって、いすゞの顔として販売されたフローリアンの原型は、昭和41(1966)年の東京モーターショーに展示されたプロトタイプ「117サルーン」だった。

画像: 逆スラントのフロント、異形角形ヘッドランプ、後端の下がったシルエットなど、デザインに賛否があったのは事実だが、当時の日本車にはない味わいがあった。

逆スラントのフロント、異形角形ヘッドランプ、後端の下がったシルエットなど、デザインに賛否があったのは事実だが、当時の日本車にはない味わいがあった。

117クーぺと同様、イタリアのギア社がデザインを行い、セミファストバックのテールラインなどに共通点も見られたが、流麗な117クーペ人気に隠れて、あまり目立たない存在だったのは事実だ。

市販が開始されたのは昭和42(1967)年11月で、東京モーターショーに参考展示されたときとほぼ同じスタイルでの発売となった。全体的なフォルムはヨーロッパ風だが、随所にアメリカ車的なデザインを持っているのが特徴だった。

画像: オーナーデラックスは4速フロアシフトを採用してスポーティ感もある。シートベルト(当時は安全ベルトと呼ばれていた)も標準装備していた。

オーナーデラックスは4速フロアシフトを採用してスポーティ感もある。シートベルト(当時は安全ベルトと呼ばれていた)も標準装備していた。

搭載エンジンは1.6L直4OHVのG161型。駆動方式は一般的なFRだ。サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン式、リアがリーフリジッドの組み合わせとなる。トランスミッションはコラム式3速MT、フロア式4速MT、3速ATをグレードによって使い分けていた。

安全への意識も高く、ボディパネルに薄鋼板を使って衝突時のエネルギーを柔軟に吸収するクラッシャブル構造としたのも先進的だった。またフロントシートに国産車で初めて安全ベルトを標準装備し、マスターバック付きのブレーキをこのクラスで標準装備として、ブレーキ踏力を軽減したのもフローリアンが最初だった。

画像: フローリアンは昭和44(1969)年3月に初めてのマイナーチェンジを実施した。ツインキャブレターを装備したホットモデル「TS」が投入されたのだ。ちなみにTSは「Touring Sports」の略。この時、フロントランプが丸形4灯になるなどデザインも小変更されている。フローリアン自体は16年の長寿車となる。

フローリアンは昭和44(1969)年3月に初めてのマイナーチェンジを実施した。ツインキャブレターを装備したホットモデル「TS」が投入されたのだ。ちなみにTSは「Touring Sports」の略。この時、フロントランプが丸形4灯になるなどデザインも小変更されている。フローリアン自体は16年の長寿車となる。

発売以来、各所に改良を加えながら、16年にわたって第一線で活躍。昭和58(1983)年にアスカに引き継ぐ形でその使命を終えるが、その長寿命の裏に基本設計の優秀さがうかがえる。

いすゞフローリアン1600オーナーズデラックス(PA20型)諸元

●全長×全幅×全高:4250×1600×1445)mm
●ホイールベース:2500mm
●車両重量:945kg
●エンジン型式・種類:G161型・直4OHV
●排気量:1584cc
●最高出力:84ps/5200rpm
●最大トルク:12.4kgm/2600rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-13 4P
●新車価格:66万8000円

This article is a sponsored article by
''.