この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第47回目は、快速軽自動車として話題を呼んだスズキ フロンテSSの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

軽乗用車で初めて0→400mで20秒を切った俊足モデル

昭和43(1968)年11月、LC10系のフロンテシリーズに追加されたスポーツバージョンがフロンテSSだ。前年の昭和42(1967)年3月に登場し、高出力、高性能、低価格でたちまち軽乗用車市場のトップに躍り出たホンダN360に対抗すべく登場した、スズキのハイパフォーマンス軽自動車である。

画像: 空冷2ストローク3気筒エンジン。シリンダーヘッドをアルミ合金とし軽量化。さらに圧縮比を上げ、3キャブとして36psの 高 出 力を発生した。

空冷2ストローク3気筒エンジン。シリンダーヘッドをアルミ合金とし軽量化。さらに圧縮比を上げ、3キャブとして36psの 高 出 力を発生した。

エンジンは空冷2サイクル3気筒、356cc、CVキャブレター 3連装で36psのLC10型を搭載。LC10型の標準エンジンの最高出力は25psであったが、圧縮比のアップに加え、シリンダーヘッドを軽量なアルミ合金に改め、さらに口径の大きいキャブレター3連装などによって、実に11psアップの36psとしたものであった。トランスミッションは4速フルシンンクロとした。

最高速は125km/hに達して、0→400m加速は軽乗用車では初めて20秒を切る19.95秒をマークする俊足ぶりだった。最高出力31psでスタートしたホンダN360も昭和43(1968)年9月にツインキャブで36psのTシリーズを追加、スバル360もフロンテSSと同じ43年11月からツインキャブで36psのヤングSSを加えているので、これで36psの軽自動車ホットモデルが顔を揃えたことになる。

画像: シンプルながらもスポーツ心のある運転席は魅力的だ。ステアリングは2本スポーク。スバルヤングSS同様、RR方 式としたことで前席のレッグスペースは広いものとなった。

シンプルながらもスポーツ心のある運転席は魅力的だ。ステアリングは2本スポーク。スバルヤングSS同様、RR方 式としたことで前席のレッグスペースは広いものとなった。

そしてこの後にミニカ'70GSS、フェローMAXSSが続くことになる。まさに軽スポーツが花を開いていく時代であった。ブラックマスクにブラックタイヤ、砲弾型ミラー、ブラックを基調としたダッシュボードなどで、スポーツムードも満点のSSだったが、昭和45(1970)年4月には同じ36psのエンジンを搭載した、さらにスポーティなSSSも追加されている。

スズキ フロンテSS(LC10型)諸元

●全長×全幅×全高:2995×1295×1290)mm
●ホイールベース:1960mm
●車両重量:445kg
●エンジン型式・種類:LC10型・直3 2ストローク
●排気量:356cc
●最高出力:36ps/7000rpm
●最大トルク:3.7kgm/6500rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:4.80-10-2PR
●新車価格:39万9000円

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