スズキ株式会社(以下、スズキ)のインド子会社であるマルチ・スズキ・インディア社(以下、マルチ・スズキ)は、インド・ハリヤナ州マネサール工場に設置したバイオガス精製のための試験的プラントが2024年6月より稼働したと発表しました。

スズキがインドでバイオマス事業に積極的な理由

画像: インド・ハリヤナ州マネサール工場に設置されたバイオガス精製プラント。

インド・ハリヤナ州マネサール工場に設置されたバイオガス精製プラント。

スズキとマルチ・スズキは、これまでもインドでバイオマス事業に積極的に取り組むことで、再生可能エネルギーを積極的に使い、環境負荷の低減やカーボンニュートラルの実現を目指してきました。とくに今後も人口が増え、産業も発展していくと見込まれるインドにとって、環境問題はとても重要な課題です。

とくにここ数年インドでは熱波による異常な高温や干ばつが起こっています。その一方で、大雨やそれが引き起こす洪水なども起こっており、環境の急激な変化が原因と考えられる異常気象がとても深刻な問題になっています。そんな状況を少しでも改善すべく、スズキとマルチ・スズキは取り組んでいるのです。

今回稼働したプラントは試験的なものですが、機能は実用プラントとほぼ同様です。その仕組みは、工場内で栽培されるネピアグラスというイネ科の多年草や、工場の食堂から出た残飯を原料にバイオガスを発生。ガスはプラント内で精製され、工場の食堂や生産工程の燃料として活用されます。また、ガスの発生にともない出た残渣(廃棄物)は有機肥料としてネピアグラスの栽培に利用されます。

このプラントでは0.2トン/日のバイオガスの生成が見込まれています。また、このガスを使うことで約190トン/年の二酸化炭素の削減を見込んでいます。

バイオガスでクルマを走らせる取り組みも

画像: スズキがインドで展開するバイオガス事業の全体図。

スズキがインドで展開するバイオガス事業の全体図。

今回稼働したプラントで生成したバイオガスはあくまでも工場での活用を想定していますが、実はスズキとマルチ・スズキはバイオガスを使ってクルマを走らせることにも取り組んでいます。

その仕組は(図のように)、インドにたくさんいる牛のフンを回収して温暖化の要因となるメタンガスの自然発生と大気への放出を抑制します。その一方で回収した牛のフンから燃料用バイオガス(メタンガス)の精製と肥料の製造を同時に行うという、実に効率的な取り組みなのです。

画像: 2023年のジャパンモビリティショーに展示されていたワゴンR CBG車。

2023年のジャパンモビリティショーに展示されていたワゴンR CBG車。

これにともないバイオガスで走るクルマも開発され、2023年のジャパンモビリティショーでは「ワゴンR CBG車」として展示されていました。CBGとはCompressed Biomethane Gas(圧縮バイオメタンガス)の略です。スズキはワゴンR CBG車のようなクルマがインドの農村部の日常の足となれば地域が活性化され、持続可能かつ循環型社会実現の一助にもなると考えています。

ちなみに、インドで販売されたスズキ車(新車)のうちCO2排出量、発熱量ともにガソリンエンジン車よりも抑えられる天然ガス車の販売割合は実に20%にものぼります。このことから、CBG車もそれほど抵抗なくガス車の一種としてインドでは社会に受け入れられそうです。

自動車メーカーが取り組む環境対策というと、省燃費性能の追求やCO2排出量削減、これを実現するための電動化や代替燃料の開発などに注目が集まりがちです。

ですが、新興国や発展途上国ではこういった高コストかつハイテクな技術よりも、スズキとマルチ・スズキが取り組むようなエネルギーの地産地消ができて比較的実用化が簡単な技術のほうが有用であることは明白です。こうしたスズキの取り組みがインドに少しでも明るい未来をもたらすことを祈るばかりです。

This article is a sponsored article by
''.