2010年にGM傘下からスパイカー傘下に移り、注目を集めていたサーブのニューモデルが2010年末になって日本に上陸した。それが新生サーブの第1弾「サーブ 9-3X」。個性的で魅力あるクルマ作りで日本でもファンの多かったサーブだが、この「サーブ 9-3X」はどう評価されていたのか。今回は上陸間のなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年2月号より)

紆余曲折を経てオランダのスパイカー・カーズの傘下に

1947年にスウェーデンの航空機・軍需品メーカーの自動車製造部門として設立、2000年からはGMの完全子会社としてプレミアムモデルを生産してきたサーブ。ところが2009年に親会社のGMが経営破綻。その後紆余曲折を経て、2010年2月からオランダのスパイカー・カーズ(Spyker Cars NV)の傘下になり、新生サーブオートモービルエービーとして、あらためて車両の生産・販売活動を開始している。

日本においては従来、GMアジアパシフィックジャパン系列でサーブ車の輸入販売が行われてきたが、2010年9月にピーシーアイがGMAPJから輸入総代理店業務を引き継ぎ、10月にヤナセと新たに販売店契約を締結したことで、従来どおり全国24カ所のサーブネットワークでの販売、および全国78拠点でのアフターサービスに対応する。現在のサーブオーナーも、新たなサーブファンも、日本で安心してサーブ車に乗ることができる体制が整ったと言っていい。

と、ここ数年の激動の流れをいま一度簡単におさらいしたところで、新生なったサーブのニューモデル、9-3Xの紹介に移ろう。

9-3Xは、2009年のジュネーブショーでデビューしたクロスオーバーSUVだ。現行型の9-3スポーツエステートをベースに地上高を35mmアップさせ、XWDと呼ぶハルデックス社製の湿式多板クラッチのセンターデフを備えたフルタイム4WDシステムを採用、オフロード性能を向上させたモデルとなる。

搭載するエンジンは210ps/300Nmを発生する2L DOHCターボ。6速ATと組み合わされ、0→100km/hは8.5秒、最高速度は230km/hを誇る俊足グランドツアラーでもある。

エクステリアは、見てのとおり非常にアグレッシブなデザインとなる。ホイールアーチをグレーモール化、また前後バンパー下にアルミパネルを備え、SUVテイストを演出している。

画像: 9-3スポーツエステートの地上高を35mm上げ、オフロードでの性能を向上。SUVルックで抜群の存在感がある。

9-3スポーツエステートの地上高を35mm上げ、オフロードでの性能を向上。SUVルックで抜群の存在感がある。

たっぷりとしたストロークで、フットワークはしなやか

運転席に座ると、アバンギャルドな外装とは異なり、シックな北欧風テイストの室内となる。基本的には9-3セダン/エステートと変わりがない。シフトレバー手前にあるシリンダーにキーを挿し込み、捻ってエンジンを始動する。

速度計の右隣にある「TURBO」メーターがブースト圧を高らかに表示するが、低回転から穏やかに効くタイプで、アクセルペダルの踏み込みに対してごく自然にパワーが盛り上がっていく。クセがなく扱いやすい性格の持ち主だ。

フットワークは非常にしなやか。たっぷりとしたストロークがあり、首都高速を走行しても路面段差での突き上げがほとんどない。ワインディングでは、ゆっくりとしたロール感を与えながらも軽やかな走りまで披露する。

そうしたよく動く足を持ちながら、速度を上げれば上げるほど安定感が増していき、高速域では非常に落ち着きのある走りを見せるのがいい。6速ATの100km/h時の回転数は1800rpmで、静粛性も高く高速巡航は大の得意と言える。

個性的で魅力あるモデルだが、不満点もいくつか。右手側を押すとシフトアップ、左手側を押すとダウンのステアリングシフトも標準装着するが、シフトレバーをDレンジから左に倒してMモードにしないと機能せず、Mモードにすると完全にマニュアルシフト操作を求められるのは他の9-3シリーズとも共通なのだが、やはり扱いづらい。

近年主流となる小排気量+過給エンジンとは出自やコンセプトが異なるためか、欧州総合燃費で9.9km/L、高速道路走行が全体の約8割だった今回の試乗では8.8km/Lとなった。

9-3Xを皮切りに、まもなくフラッグシップとなる新型9-5セダンも日本上陸。さらに2011年中に新型9-5エステートや9-4X、12年には新型9-3と、ニューモデルを続々と投入する予定のサーブ。今後の動向にも注目したい。(文:Motor Magazine編集部 /写真:井上雅行)

画像: 基本的に従来の9-3シリーズと同様の、シックな北欧風テイストのインテリア。

基本的に従来の9-3シリーズと同様の、シックな北欧風テイストのインテリア。

サーブ 9-3X 主要諸元

●全長×全幅×全高:4690×1800×1570mm 
●ホイールベース:2675mm 
●車両重量:1680kg  
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:154kW(209ps)/5300rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/2500rpm 
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:520万円(2011年当時)

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