「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、マクラーレン MP4-12Cだ。

一般道からサーキットまでフレキシブルに対応

画像: 試乗コースはあいにくのウエット。エアブレーキを作動させ、水煙を上げながら減速する。

試乗コースはあいにくのウエット。エアブレーキを作動させ、水煙を上げながら減速する。

乗り心地に関しては、サスペンションのセッティングを“ノーマル”にしておけばいい。一般道のボコボコした路面で突き上げやシェイクもなくフラットに走る。だが、これを“スポーツ”、さらに“トラック”にしていくと、その性格がガラリ変わる。

コーナーでの粘り腰がどんどん強まってきて、かなりの速度域でもピタッと張りついた走りを見せる。しかも、パワートレーンと書かれたダイヤルも“トラック”にすれば、本領発揮とばかりにレーシーな世界へ誘う。フラップの開いた排気管は爆音を奏で、アクセルに対するピックアップもクイックになる。この感覚は、レーシングカーそのものだ。

したがって、挙動はミッドシップらしく自分を中心に弧を描くようにコーナーへ進入する。スッとステアリングを切ったときの一体感は、カーボンとアルミフレームの賜物だろう。かなりクイックだ。マクラーレン社は、カーボンファイバーを扱ってきた歴史があることを強くアピールしていたが、このあたりは明らかにF1マシンを作ってきた強みといえる。

また、明らかにレーシングマシンからのフィードバックとして、エアブレーキを採用していることも挙げられる。リアスポイラーが90度近くまで立ち上がり空気抵抗を強めてくれる。こんな市販車は、ブガッティ ヴェイロン以外に見たことがない。

そんなMP4‐12Cに、この夏(編集部註:2012年)スパイダーが追加されるのもニュースだ。今回、生産ラインの見学中に偶然チラ見したが、かなりいい仕上がりだった。オープンモデルだから、リアエンジンがガラス越しに拝める。これはアウディ R8ではできなかった手法だ。このように話題が尽きないマクラーレン。今後しばらくは、このブランドから目が離せそうになさそうだ。

画像: 日本仕様もハンドル位置は右/左とも設定されている。内装の色や素材などはオーナーの好みで選ぶビスポーク方式だ。

日本仕様もハンドル位置は右/左とも設定されている。内装の色や素材などはオーナーの好みで選ぶビスポーク方式だ。

マクラーレン MP4-12C 主要諸元

●全長×全幅×全高:4507×1909×1199mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1336kg
●エンジン:V8 DOHC+ターボ×2
●総排気量:3799cc
●最高出力:441kW(600ps)/7000rpm
●最大トルク:600Nm(61.2㎏m)/3000-7000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●EU総合燃費:8.5km/L
●タイヤサイズ:前235/35R19、後305/30R20
●当時の車両価格(税込):2790万円

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