F1にはなくてはならない素材となったカーボンファイバー
カーボンファイバーは軽量で強度が高く、速さだけでなく安全性の面でF1の発展に大きく貢献してきた。もっとも1958年に米国で発明されたものの、実用化が難しく広く知られる素材ではなかったようだ。それでも1980年にマクラーレンがF1で初めて採用したことで、注目を集めることになった。
スクーデリア・フェラーリは1982年にアルミニウムシャシを強化するためにカーボンファイバーパネルを使用し、この新素材でリアウイングも製造。翌1983年シーズンにフェラーリ126 C3がデビューしたが、これがフェラーリでカーボンファイバーモノコックを備えた最初のマシンとなった。フェラーリ126 C3はイギリスGPでデビューし、次のドイツGPでルネ・アルヌーが優勝を飾っている。
その後、コンピューターが進化し、カーボンファイバーに対する理解が徐々に深まるにつれ、F1 でのこの素材の使用は飛躍的に増加。洗練されて軽量化される中で、グラスファイバーに取って代わるようになり、ブレーキディスク、衝突保護構造、エンジンの吸気口、一部のエンジン部品などにも登場した。1994 年まで金属製だったサスペンションアームも、徐々にカーボンファイバー製に移行し、ステアリングコラムやドライバーシートにも使われるようになった。
21世紀になるとカーボンファイバーはさらに普及し、安全性の観点からさらに部品の数が増えていく。ステアリングアームやサスペンションアームもカーボン製となり、今やペダル類もドライバーの靴の形に合わせてカーボンで作られている。2003年以降、それまでアルミニウムで作られていたギアボックスケースは、チタンとカーボンのハイブリッドに切り替わり、2014 年からは完全にカーボン製になった。
カーボンファイバーは最初はレーシングカーで使用されたが、その強度と軽さにより、サーキットから公道へと広まり、現在では、量産スポーツカーにもこの素材がフル活用されている。