頂点を目指すために生まれた「もっとスーパー」な奴ら
ポルシェ911 GT1(1996~1998)「ル・マン制覇を目指して生まれたスーパーGTマシン」
1995年のル・マンはマクラーレンF1(後述)が総合優勝を飾り、他のGTレースでも圧倒的な強さを見せた。王者たるポルシェとしては、この光景を黙って見ているわけにはいかなかった。そこで911をベースに「打倒マクラーレンF1」を目標に生まれたのが911GTだ。
ミッドに搭載されたエンジンは3164ccの水平対向6気筒だが、空冷ではなく水冷となり、シリンダーヘッドは4バルブDOHC化されツインターボを装着。レース仕様の公称最高出力は600ps以上といわれている。
スタイリングは、キャビンや顔つきに911の面影を残しているが、ロングテール化され巨大なウイングが装着されるなどリア周りはレーシングマシンそのもの。GT1は、1997、98年と進化をし、特に1998年仕様は911がベースとは思えないほどのスタイルとなった。
当時、GT1の規定で公道仕様を25台生産する必要があり、911GT1にはストリートバージョンが存在する。レース仕様とスタイリングは共通だが、エンジンは当時のヨーロッパの排出規制をクリアするためにデチューンされていた。最高出力は554ps、最大トルクは600Nmを発生した。
ル・マンでは1996年に総合2-3位を獲得。1997年は2台のリタイアだったが、1998年に1-2フィニッシュを飾っている。
マクラーレンF1(1993~1998)「F1コンストラクターが作ったロードゴーイングカー」
1992年、マクラーレン カーズ(現マクラーレンオートモーティブ)は、初の高性能市販車「マクラーレン F1」をモナコで発表した。エンジニアリングを手がけたのは、F1グランプリ マシンの設計でも知られるゴードン・マレー。デザインは、ピーター・スティーブンスが手がけた。
F1という名前が示すとおり、そのテクノロジーにはF1グランプリマシンからのフィードバックが生かされている。カーボン(CFRP)製のモノコックに縦置きミッドシップ搭載されるエンジンは、BMW製の6.1LのV型12気筒DOHCで、最高出力は627ps、最大トルクは69.3kgmを発生。当時「世界でもっとも出力の高いクルマ」として、ギネスブックに掲載されて話題となった。
組み合わされるトランスミッションは、エンジンの後方に横向きにセットされた6速MT。最高速度は400km/hに迫っており、タイヤの性能にもよるが、もはやRWDでは限界に近いパフォーマンスを発揮した。
スタイルもパフォーマンスもアグレッシブだったが、けっして奇をてらったものではなく、とくにスタイルはスーパーカーのデザイン手法に則ったものだった。現在のマクラーレン車にも継承される、前ヒンジのディヘドラルドア(バタフライドアとも呼ばれる)を開けると、衝撃的なシート配列が目に入る。
中央に運転席を置き、その両脇に少し後方へオフセットした助手席を左右にセットするという、特殊な3シーターレイアウトを採用するのだ。その採用理由は、1名乗車時の左右重量配分を適正化でき、しかもホイールハウスが邪魔しないので最適なペダル配置ができるメリットがあると説明されている。
マクラーレン F1はモータースポーツでも活躍し、1995年のル・マン24時間レースでは総合優勝を果たしている。上位5台のうち4台がF1だった。