固く握手をするふたりの男性。ひとりは誰もが知っている有名人、トヨタ自動車の豊田章男会長である。そしてもうひとりははヒョンデモーターグループの鄭義宣(チョン ウィソン)会長だ。
このふたりはグローバルの自動車販売台数1位と3位、FIA世界ラリー選手権(WRC)2024のマニファクチャラーズランキング2位と1位(第12戦終了時点)というライバル関係にある。
しかしこの日ばかりは違った。まるで親友に再会したような満面の笑みを浮かべていた。
ヒョンデとトヨタが初めて共同でイベントを開催
この日とは2024年10月27日。韓国 龍仁(ヨンイン)スピードウェイでヒョンデとトヨタが共同で「Hyundai N×TOYOTA
GAZOO Racing FESTIVAL(ヒョンデ N×トヨタGRレーシング フェスィバル)」を開催した日である。
ライバル関係にある2社がイベントを共催した切っ掛けは、モータースポーツが大好きな両会長が今年初めに会ったときに、アジアのクルマ好きを増やしていくためになにかできないかというふたりの想いが合致したことだという。
オープニングの時にステージで豊田章男会長は「今年の初めにチョン・ウィソン会長と日本でお会いしてこの話が盛り上がり、なんと10ヵ月後にこのようなイベントが実現できました。イベントの実現をサポートしてくださった多くの人たちに心から感謝しています。トヨタとヒョンデは一緒に手を取り合って、より良い社会、そしてモビリティの未来をつくっていきたいと思います」と語った。
そしてヒョンデのチョン ウィソン会長は「ハイパフォーマンスなNブランドをとおして、私たちは興奮と感動をすべてのクルマファンに届けることに尽力しています。より多くの人々が運転する喜びを味わえるよう、トヨタとともにモータースポーツでも前進し続けます。今回のイベントは、今年初めに豊田章男会長とお会いした際、私たちはモータースポーツに対する共通の情熱を見出し、その結果としてこのイベントを開催できたことを大変嬉しく思います。豊田会長は自動車業界で私が深く尊敬する人であり、本日ここで一緒にいられることを光栄に思います」とコメントしている。
先日公開されたばかりのヒョンデRN24もドリフト走行
実際、ヒョンデとトヨタによる歴史的なイベント、ヒョンデ N×トヨタGRレーシング フェスィバルは、多くの来場者で賑わい、さまざまなメニューは大盛況だった。
そして驚きだったのはヒョンデとトヨタにWRC参戦ドライバーが参加したことだ。ヒョンデのティエリー ヌービル選手やダニエル ソルド選手、そしてトヨタから勝田貴元選手らがドリフトデモ走行などを披露しイベントを盛り上げていた。
さらにヒョンデは、先日行われたヒョンデNデーで公開されたばかりのRN24も走らせるというサプライズも行った。このRN24は、次世代のクルマを実験・検証する「ローリングラボ」でIONIQ 5 Nの高度なパワーエレクトロニクスシステムと、次世代ソフトウェアが使われたシャシを組み合わせたコンパクトで軽量な車両コンセプトで、次世代の高性能Nロードカーに復活させるというNの意図を示しているという。
され多く人が来場したヒョンデとトヨタの共催イベント。チケットはすぐに完売したというが、その売上はすべて韓国のモータースポーツの発展のために寄付されるという。
現在はWRCの韓国開催もなく、韓国人のWRCドライバーもいないのが現状だが、こうしたイベントを切っ掛けにラリードライバーの誕生やWRCが開催される日もそう遠くないかもしれない。