70年にわたるジープの伝統がしっかりと継承されている
4世代目となる新しいグランドチェロキーが日本に導入された。大きな成功を収めた初代モデルから約20年、スタイルこそ洗練されたが、伝統の縦7本スロットグリルや台形ホイールアーチなど、ひと目でグランドチェロキーだとわかるアイコンは健在だ。搭載されたのは、新開発の自然吸気3.6L V6DOHCエンジンのみで、先代のようにV8モデルやSRT8は、今のところない。
試乗に用意されたのは、リミテッドのエアサスペンション装着車。走り出す前にスペックを見て「2.2トンも車両重量があるんだからV6じゃちょっともの足りないかも」と思ったが、それはアクセルペダルを軽く踏み込んだ瞬間、その心配は見事に覆された。この走りの印象は後述するとして先に新しいグランドチェロキーのディテールを見てみよう。
まずは、室内を見渡して気づくのは、インテリアの質感がかなり向上していることだ。インパネには、デザインの段階からレイアウトされたモニターがあり、ドライバーやパッセンジャーが触れる部分にはソフトな素材が使用されている。このソフト素材は触れたときの手触りが滑らかなことに加え、室内のノイズを抑えることにも貢献している。このクオリティの高さは、先代モデルのオーナーが見たらちょっとうらやましくなってしまうかもしれない。
進化している部分は他にも多くある。たとえば、ジープに初めて採用された、車高を最大105mm上昇させることができるエアサスペンションやクォドラトラックⅡ4×4システム。5つの走行条件に合わせた走りができるセレクテレインシステムなども新型の特徴と言える。
さらに、初採用された後席のリクライニングシートやキーが必要ない燃料の給油キャップなどもそう。そこにはワールドワイドな要望へ応えたことに加え、実用性と快適性を追求したクルマづくりという70年にわたるジープの伝統もしっかりと継承されている。そうそう、ジープは今年70周年を迎える老舗ブランドなのだ。
トランスミッションは従来どおり5速ATで、JC08モード燃費は7.7km/L。排気量の3.6Lから考えれば決して悪いデータではないが、だからこそ6速化すればもっとよくなるのでは、と欲張ってしまう。いまの時代はクルマにとって環境性能は欠かすことのできない要素であり、それを全面的にアピールできないのは少々残念だと言わざるを得ない。
例えばメルセデス・ベンツMLクラスにはクリーンディーゼルがあるし、BMW X6やポルシェカイエン、フォルクスワーゲントゥアレグにはハイブリットモデルが存在する。ビッグSUVだからこそ、こうしたモデルの存在は欠かせないはずである。
ボディ剛性の高さがしっかりとした走りに現れている
しかし、それでも新型グランドチェロキーの走りはかなりいい。試乗して一番最初に感じたのは、ボディ剛性の高さだった。ねじれ剛性を146%高めた成果は、しっかりとした走りに現れている。
3.6L V6エンジンにパワー不足を感じない。加速フィールはよく、力強さもある。ただ、この力強さは先代モデルとは違った種類のもので、先代が300psオーバーの有り余るV8パワーで重厚感あるものだったのに対して、新型はキビキビとした軽快さを持つ力強さである。
これにはエアサスペンションも貢献していて、ちょっとした荒れた路面などほとんど意に介せずに走ってしまうという懐の深さなのだ。今回はオフロード性能をテストできなかったが、オンロードのポテンシャルは確実に、そして大きくレベルアップしていると言っていいだろう。
ところで気になる実燃費だが、残念ながら今回の試乗ではデータを取ることができなかった。次の機会にはぜひとも計測してみたい。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)
ジープ グランドチェロキー リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4825×1935×1770mm
●ホイールベース:2915mm
●車両重量:2200kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3604cc
●最高出力:210kW(286ps)/6350rpm
●最大トルク:347Nm/4300rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:523万円(2011年当時)