バーチャルのパイロンで競う「3次元のジムカーナ」

第1戦のコース レイアウト。通過ゲートは14カ所で、かなりテクニカルなコースだ。
2019年で終了した「レッドブル エアレース ワールドチャンピオンシップ」に代わり、2023年からはバーチャルを活用した「エアレース X」が開催され、2024年シーズンは室屋選手が初代チャンピオンに輝いた。レッドブル エアレースと同様、コースに設置されたパイロンによるゲートを通過してスラロームや旋回、宙返りなどを行ってタイムを競う、いわば3次元のジムカーナだ。
だが、最大の違いはパイロンがバーチャルであること。しかも同じコースで競い合うのではなく、自分のチームの拠点で飛行し、タイムを計測する。パイロンの場所は、実際には立っていないが地上にポイントされており、そこにパイロンがあると認識してスラロームやターンを行うのは、かなり至難の業だ。そこで予選、準々決勝、準決勝、決勝と4本のフライトを行う。
天候や気象条件などを考慮して、各選手がイコールコンディションになるようにタイムは調整される。予選タイムを元に、準々決勝→準決勝→決勝および3位決定戦と、各ラウンド1対1のノックアウト方式で本戦は展開される。コロナ禍で、選手が集まらなくてもレースができ、またギャラリーもYouTubeなどで観戦できることから、エアレース Xはこの形式で開催されている。

エアレース Xの動画より。パイロンはバーチャルなので、実際には存在していない。
さて、今回のコースは長さ約800m、2本のパイロンでセットされたゲートが5カ所。そのコース内で指定されたターンやスラロームを行い、通過ゲートは14カ所。そんなテクニカルなコースを約1分のフライトで競う。予選を2位で通過した室屋選手は、準々決勝、準決勝と順調に勝ち進み、決勝に臨む。決勝の相手は南アフリカのP.デビッドソン選手。序盤は室屋選手が先行したが後半で逆転され、惜しくも敗れた。
室屋選手と共創活動を行っている「レクサス パスファインダー エアレーシング(以下、LPAR)」の中江テクニカルコーディネーターによれば、今回は開幕戦ということで、エンジンマネージメントや尾輪の小型化といった小改良で「様子見」的に臨んだが、第2戦からはウイングレット(主翼両端の翼端板)の改良など、空力面でのアップデートを図る予定だ。シリーズはあと3戦あるから、室屋選手の巻き返しに期待しよう。