●ヘッドライトまわりのデザインが印象的
創設100周年を迎えるシボレーブランドだが、その歴史と変遷には一言では表せない重みがある。そしていま、シボレーは新生ゼネラルモーターズにおけるもっとも大きなブランドとして位置づけられ、北南米や欧州だけでなく中国、ロシア、インドで大きな販売台数を記録している。2010年のシボレーブランドとしての世界販売台数は、過去最高の426万台なのだ。
日本では5月末にライトSUVの「キャプティバ」が発表され、この10月にはシボレーとして久しぶりのコンパクトモデルとなる「ソニック」がデビューした。ちなみに北米市場と日本市場では「ソニック」だが、その他の市場では「アベオ」というモデル名が与えられている。
試乗会場の地下駐車場でソニックに乗り込もうとした際、やはり思った。実に強力なアイキャッチを備えているな、と。いわゆる“目ヂカラ”に満ちている。ヘッドライトまわりのデザインが実に印象的で、現代的な丸目4灯式ライトの周囲にはクロームリングが配され、それをブラックのベゼルでさらに引き立てるという構成。さらに上下2段に分かれたフロントデュアルポートグリルの中央にはシボレーのボウタイロゴが輝き、ブランドイメージをアピールする。
いまコンパクトセグメントなどで主流となっている最新デザインとはひと味違う、ラテンアメリカ的とでも表現したい力強さやエキゾチック感がその眼差しを通して伝わってくる。

後席用ドアハンドルはCピラー部にあるので3ドアモデルのようにも見える。リアランプは丸型4灯でフロントのデザインと協調。
操舵にしっかりと反応するレスポンスの良さが小気味がいい
ソニックのボディサイズはちょうどアルファロメオ・ミトの車高を50mmアップさせたのと同じぐらい。5ドアハッチバックのBセグメントに属するモデルと考えると大柄な方で、予想していたイメージよりもはるかにボリューム感がある。エンジンは1.6L DOHCのノンターボエンジンで、これにGMのコンパクトクラスモデルとして初となる6速ATが組み合わされる。
アクセルペダルを踏んで発進する際、ホンの一瞬の間を感じたものの、走り出せば驚くほどスムーズで、それでいて力感もある。平地ならスッと40km/hぐらいまで車速が乗ってくれるので街中でのストレスは感じなかった。「グローバル・ガンマ・アーキテクチャー」を採用するボディは実にしっかりとしている印象で、抑えの効いた乗り心地は予想以上に快適。
メーターパネルをはじめとるするインテリアのデザインは、「クールで斬新かつ大胆なデザイン」というキャッチフレーズがそのままあてはまる印象。想定ターゲットカスタマーに「物事を常にポジティブに捉える」「他とは違った個性を求める方」という項目が挙がっていたが、まさにそういったユーザーにふさわしい作りだ。
首都高速道路に入ってちょっとドライブを楽しんでみる。ハンドリングは、レスポンスの良さを表現する設定。ちょっとした操舵にもしっかりと反応を見せてくれて小気味がいい。ただし、ジャンクションにあるようなハンドルを45度以上切り込んでいくような小さな曲率のコーナーでは、そこから操舵力がフッと軽くなり、クルマの反応もよりイン側に向かいたがるような印象を受けた。
6速ATをマニュアルモードで操作するには、シフトノブ右側の横に縦向きで配置された小さなタップスイッチを使う。シフトダウンしたい時は下側を押し、アップの場合は上側を押すというレイアウト。新鮮な操作感ではあったが、正直ちょっと迷った。
標準モデルで189.0万円、アルミホイールとメタリックペイントを含むLTが198.0万円という価格設定。欧州市場を意識した走り味を持ち、そこにシボレーというブランドイメージが加わる。他モデルにはない独自の持ち味を備えた個性的コンパクトモデルの登場といえる。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁)

右ハンドル仕様で、ウインカーレバーは日本車と同じくハンドルコラム右側に配置。
シボレー ソニック LT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4050×1740×1525mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1220kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1597cc
●最高出力:85kW(115ps)/ 6000rpm
●最大トルク:155Nm(15.8kgm)/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):198万円(2011年当時)

